気付いたら、雨が降っていて。
あーあ、これじゃぁとこかで見た学園ドラマと同じだ、と心底思った。



ばしゃばしゃと、走るたびに雨が地面に打たれ泥水になった水しぶきが靴と靴下をぬらした。
自分の家の前を通り過ぎ、右角を曲がれば目を奪われるほど綺麗な家にたどり着く。
それが晋助の家だった。 予想通り、明かりはついていて、外の寒い風景には似合わず、温かそうな色をしていた。

急いで自分の鞄から合鍵を出して、震える手でがちゃがちゃと開ける。
でも、そこには『何してんだ?』とお帰りという代わりに発せられる言葉がなくて。


知らない女の人がそこに立っていた。

「あ、」
「どなた?」
「あ、うあ、うああ、」

噎せた。心臓を誰かに握り潰される様な感覚に陥った。


知らない女の人の背後から、晋助の驚いた顔を見た瞬間、
そのまま回れ右をして玄関先から飛び出した。



背後から、自分の名前を叫ぶ晋助の声を聞いたが、振り向けなかった。










どうしよう、どうしよう、どうしよう。
(明日も学校行かなきゃ成らないのに、顔向けできないのに。)