
「銀さーん、さーん。買い出し終りましたよ〜」
「おー。んじゃぁ、夕飯宜しく。」
「何でだァァ!」
「もう、お前しか無いだろ。」
「んじゃぁ、アタシがやるよ。」
「いや、さんはそのままで」
「どういう意味じゃ、コラ。」
というわけで、夕飯を新八にまかせて、俺らはテレビを見てた。
向かい側に座るのは、無表情でテレビを見る。
試しに丸めたティッシュを投げ捨てたら、案の定、反応しない。
「?」
名前を読んでも反応しない。
「なぁ、!」
「うをっ!?」
「やっと反応した」
「何?どうした?腹痛い?」
「ちげぇよ」
「んじゃぁ、何よ。」
「お前、今、何考えてた?」
「とっても良い事。」
可笑しいな。
部屋中のカミソリというカミソリは隠したはずだ。
「お風呂をスプラッターにすることか?」
「ちがうよー。」
「血だらけにすんのは勘弁してくれよな?」
「しないよ、もう」
「、、、うそつけ」
「うそじゃなーい」
「、、、じゃぁ、朝の布団、アレ、何だ!?」
「生理です」
「ウソだろ!」
「うん、ウソ」
「、、、。ったく。」
「面倒だと思うなら、殺せば良いでしょ、」
「、、、」
兄ちゃんはアタシに甘すぎだよー。
そう呟いて、大して面白く無いテレビをまた無表情で見始めた。
「お兄ちゃんじゃねぇだろ」
「、、、。」
「銀さん、だろ?」
「、、、。」
小さい頃の癖が抜けないのか。
時々、意味もなく、ふらっと、俺のことをお兄ちゃんと呼ぶ。
「ねぇ、銀さん。」
「なんだい、さん。」
何でも聞いてくれ。
お前が、これ以上、苦しまない方法なら、いくらでも考えてやる。
「晋助は、大丈夫かな?」
「さぁな」
おれは、しらばっくれた。
いちばん、いけないこと。
「しばらく会って無いけど、元気かな?」
なぁ、。
お前が、何故、おまえ自身を傷つけてるか、知ってるか?
とても頭の良いお前の脳みそは、全てを忘れた。
だけど、どこかで残ってんだろう。
償い、と称した、無意識な行動。
「高杉驚くだろうなぁ?」
「なんでー?」
「お前が自傷なんかしてたら、驚くだろ。」
「晋助なら笑いそー」
台所のほうで、新八の「夕飯できましたよ」のこえが聞こえた。
それと同時に、にぎやかになる玄関先は、神楽が帰ってきた音だろう。
「飯にすっかー」
「うん、おなかすいた。」
「だろうな、」
ほほ笑むお前は、笑わない。
その目は、俺と小さい頃であった時のまま。
戦争中の時の目のほうが、輝いてたのに。
いつ、失われた?
”大丈夫”
と
呟いた
その言葉は失われた。