今朝、土方が地図を持って、自分のところへ来た。
流石、仕事が速いと想った。
だって、昨日、万事屋銀ちゃんがどこか聞いたばかり。






死んだ







「こんにちは、今日は随分早いですね?」
土「・・・・」

土方は、返事もせずにアタシの目の前に、地図を広げた。

________________バサッ

土「・・・万事屋の居場所。」

そう言って、行き成り指を刺した場所。
ほぼ、町の真ん中に所在してる。

「・・・・・・・・ココですか・・・?」
土「ターミナルから、真っ直ぐ走れ。
 そんで、かぶき町って所に行くんだ。
 スナックお登勢って店の上に。万事屋銀ちゃんってのがある」
「この地図で、良いんですか?」

少し疑った。 昨日聞いたとしても、仕事が速すぎる。

土「あぁ、山崎から、もらった地図だ。
 間違ってないはず」
「おかしいですね」

少し笑えた。 何でこんな事をアタシ達はしているんだろう。

土「何がだ」

だって今、土方がしてることは、アタシを [ 逃がしても良い ] って、言ってるような物だ。

「だって、アタシ達。敵でしょう?」
土「・・・・」
「・・・逃がしても良いって、言ってるような物じゃないですか。」

土方は、黙り込んだ。
アタシの返事すらしないまま、下を向いてる。
銜えたタバコの灰が、落ちそう。

「何で、何時も来てくれるんですか?」

アタシは、唐突に聞いてみた。

土「理由なんて無い。」
「松平さんからの、命令だとか?
 知っているんでしょう、アタシが、攘夷志士だったって事を。」
土「・・・・・・」

嘘を付いたって、バレバレだ。

「あ、図星だったり?
 実験結果のお陰ですよ。こんなのも出来るのは。シンクロって言うんです。
 それに、松平さんには、何言っても聞く耳を持たないんですよ。
 情報なんて持ってないのに。」

 唯一しってる、実験結果の名前の一つ、シンクロ。

土「持ってるのは、確実だって言ってるぞ?
 早いところ、吐いた方が良い。
 じゃ無いと、人質が、殺される。
 それに・・・・・・」

まだ言うんだ。情報、情報って。

「持ってないのです。アタシは。
 それに、アノ人質はアタシに関係ないんです。帰して上げてください。」
土「関係ないって言ってもむだらしぜ? 
 松平のとっつぁんは、ぜーんぶ知ってるらしい。
 それに、聞くには、アイツが、お前を攘夷に・・・・・」

違うよ。 あの人は、アタシ達に、剣の握り方を教えてくれたんだ。
アタシが、あの戦争に出た訳は。
天人が嫌いだったから。

「・・・ねぇ、鬼の副長さん? あなた達の仕事は、
 攘夷浪士を捕縛する事ですよね。
 だったら、今ココで、貴方の刀で殺してくれませんか?
 情報だって持ってない。それに、人質が殺されれば、昔の同士が悲しむ。」

先生が死ねば、晋助だって、ヅラだって、銀時だって、悲しむ。

土「万事屋が、何処にあるかと聞いたな、昨日。
 理由は何なんだ? あいつに会いに行くのか?
 それに、俺はお前の様子を見に来ただけだ。」
「・・・・・・・・」
土「お前は、昨日、万事屋が何処にあるか聞いた。
 お前は、ここから、出る心算なのか?」

・・・そうじゃなきゃ、銀時が何処に居るかなんて、聞かない。
ここから出る。
それで、晋助に伝える。

随分前、高杉晋助が、一番過激派攘夷浪士だと、土方が言った。
それはきっと、先生を幕府に取られたという怨念で、ああなったんだと想う。

だから、晋助に伝えるんだ。
先生は生きてるから、こんな事止めようって。

それと、銀時にあって、万事屋銀ちゃんを手伝う。
もし、儲かってなかったら、アタシはバイトをする。
従業員は、誰だろう。いるのかな。

ヅラは、如何だろう。 何をしてるんだろうか。


________________________バンッ!!

松平「・・・・松陽のヤローが、逃げた」
「!?」

行き成り、乱暴に開いたドア。
そこからは、松平が、先生が脱走したと告げた。

土「・・・・」
松平「・・・・どういうことだ、014」

アタシに聞かれたって仕方がない。
アタシは、知らないんだ。
先生のすることなんか。 脈拍のない、突拍子。
あれをやったと想ったら、これをやってるような、人。

「・・・知らない」
松平「知らないだぁ? ふざけんな」
「・・・・知っててどうする?
 アタシは、ここから一度も出てないし。
 先生とは、あの時以来会ってない」

大体、脱走できるような状態を作った、幕府の所為だろう、逃げたのは。
バカバカしい。 あえて、自分の所為にするではなく、他人の所為にするんだ、この人。

松平「・・・・」
土「・・・・探せば良いだろ」

そうだ、土方の言うとおり。 居なくなったんなら、探せばいい。
それで、済む事。

松平「天導衆からは、探さなくて良いといわれた。
 少し飛ぶ事を覚えさせた後、また捕まえれば良いと」
「・・・・だったら、アタシに聞かないで。」

飛ぶ事・・・か。

少し、外の空気を吸っただけで、きっと依存してしまう。
ずっとココに居たい。 ここに居たいと。
その思いを増長させた時、捕まえるって事か・・・。

嫌だな。それ。

何より、今、分かった。
幕府の拘束も、甘い物だって。
先生が逃げられるなら、アタシにだって、逃げられる。

逃げるのは、明日にしよう。
この地図は、アタシが、もらって。

でも、先に松山の実験所に行って、書類を持ってこよう。
副作用とか、短所を知っておかなきゃ、いざとなったら、不便だし。

男装しよう。 そしたらばれない筈。

それで、銀時にあって、晋助のところへ行く。
ついでに、逃げた先生を探せれば最高だけれど。

ぼーっと、考えてたら、土方が松平と一緒に部屋を出た。

___________________________バタン

捕まってから、何ヶ月たったんだろう。
もう、半年にはなる。

松山の場所に捕まって、1年と少し。
幕府に捕まって、半年。

もう、かれこれ2年には、成っちゃうな・・・・。

町はどうなったんだろう。
侍は生きてるのかな。
天人が街に居るのは、土方から、良く聞く。
だけど、目にして見なきゃ分からない。

明日が楽しみになった。

運よく、土方は地図を、残していった。
明日、逃げよう。
ココから逃げよう。





その頃、松平と土方は、廊下を歩いてた。
穏便には見えない、険悪な顔で。

松平「・・・これで口、割ると良いけどな」
土「街中で見つけたら、捕まえればいいことだろ」
松平「・・・・自由を与えられた餓鬼は、その自由を一生忘れない。
     自由を禁じられたとき、餓鬼はまた自由を手に入れるため、なんだってする。」
土「自由になった所を捕まえればいいんだろ」
松平「・・・松陽と同じようにか?」
土「ソレでいけるはずだ。」
松平「・・・流石だな。 真選組の頭脳、土方十四朗。」
土「・・・・」
松平「・・・アイツがどこに行くか、目星はついてんのか?」
土「あぁ。もう、ばっちりとな」
松平「絶対に捕まえろよ。 それでなきゃ、技と逃がした意味がない」
土「・・・・分かってる、失敗は許されないって訳だろ?」

あいつは、絶対に万事屋に行く。
絶対に。
だって、あいつは昨日聞いてきた。

万事屋銀ちゃんは、何処ですか? と。

暫く、万事屋に慣らした後、離れがたくなった頃、捕まえればいいんだ。
そんで、また拘束して。
外に出る為なら、アイツは、なんだっていう筈。

だが、アイツが、情報を持ってないと言ってるときの目は本物だった。

本当に、知らない。 そんな、目だった。 嘘を付いてるとは、思えなかった




僕等はずっと、待ってたんだ

外に出ること。

外に出させること。











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