モドカシイ。 もどかし過ぎて、逃げたい。
死んだ魚
「銀時を知ってるのか?」
「・・・・・・」
言っちゃおうか、もう。 アタシは、男装中だって。
死んでないんだ。 生きてた、今まで。 幕府に捕まってた。その前に、松山に捕まってて。
言いたい事がたくさん在りすぎで、何から話せば良いのか分からなくなった。
なぁ、ヅラ。
お前、全部知ったら、全部受け止めてくれる?
お前、全部知ったら、退かない? こんな、アタシに成り下がったけど。
「ソイツさぁ、死んでないよ。」
「・・・は?」
「その・・・俺と同じ苗字の奴、死んでないよ」
「貴様に何が分かる!」
・・・・アタシは俯いた顔をヅラに向けた。
何時に無く真剣な眼差しで、真っ直ぐにあたしを見る。
「・・・・貴様に何が分かる!」
「・・・・・」
「何が分かるのだ・・・」
ヅラが、膝から崩れ落ちるようにして、しゃがんだ。
「・・・・・目の前に居るんだよ、ヅラ。」
「・・・?」
「・・・・・」
「・・・貴様・・・」
ヅラが、顔を上げて、あたしを見た。
「・・・・」
「・・・・・・黄泉が・・・・えり?」
「もともと死んでないし」
「・・・だが、攘夷党の情報部からもらったあの死亡通知書・・・」
「・・・偽物」
「だが・・・・・」
「第一さぁ。不思議だと思わなかったの? なんで、アタシに限って、死亡通知書が来るのよ。
もし、そんなの攘夷党が作ってたら、死者数多すぎて、紙に書くの間に合わないじゃん」
アタシは、しゃがんで、驚いた顔のヅラに目線を合わせた。
「・・・・・それじゃぁ、あれは・・・嘘?」
「うん、嘘の紙。 今まで生きてました・・・的な?」
「そうか! だったら、その格好はどうした? 女になれないから、男になるのか!?」
ヅラは、あたしのカッコウを見て、そういった。
アタシは、我慢できなくなり、胸倉を掴んだ後、グーでヅラの頬を殴った。
__________________グフォッ
「てめぇ、殺す。」
「ちょっ! 落ち着け! 落ち着くんだッ!!!」
アタシは握ってた拳を、開いて、ヅラの胸倉を離してやった。
「・・・・・幕府に見つからないように、男装してるだけ。」
「・・・・追われてるのか?」
「まぁね」
アタシは立ち上がり、背伸びした。
「ソレよりさ、その白い生き物何?」
「これか? 辰馬からの贈り物、エリザベス 通称 BETHだ!」
「・・・・ペス?」
「べス!!!」
「如何でも良いよ・・・」
辰馬か・・・・。 そういえば、戦争中に、宇宙に行ったよな・・・。
逃げたと言うのではない事は知ってる。 でも、一々誤解されやすい時期に攘夷党離れれるよなぁ・・・
「・・・何処へ行くんだ?」
「教えない。」
歩き出したアタシを、ヅラが引き止めるかのように、話しかけた。
「・・・」
「・・・・・幕府には、何れ見つかると思う」
今はただ、背中の 014 と言う整理番号が、見つからないように。 暮らすだけ。
「・・・・そうだな・・・」
「ヅラだって、お尋ね者なんでしょ? あと、晋助も」
「あぁ」
「やめないでね、攘夷活動」
「・・・・」
「やめないでね。 時勢の流れに負けて、攘夷活動をやめたあたし達みたいに、ならないでね」
本当の気持ち。 本当の事。
時世の流れに負けて、攘夷活動を絶つ者も居る。
でも、ヅラは。 晋助は。 負けずに、自分の決めた道を歩く。
どんな奴等よりも、侍らしい。
「・・・・ソレよりも、、 014 とは誰か知らぬか?」
「!!!!」
「・・・・知る分けないか・・・」
「・・・知ってどうするの?」
「聞けば、014 は開国派の一端らしい」
「・・・・」
違う。 違う。 違う!!!! アタシは、開国派なんかじゃない。
「・・・・ココに来たのも、松山と言う輩と、ソノ014を探しに着たんだけどな。
見ての通り、抜け殻だ・・・」
「・・・・」
「・・・・ソレよりも、お前は何故ここにいた?」
「・・・・お化け屋敷探し」
嘘。 嘘です。
「・・・そうか・・・。 と言うよりも、今まで生きていたなら、何処で暮らしてた?」
「・・・・・森の中、熊さんに出会って、一緒に暮らしてた。」
嘘。 嘘です。
「・・・・・そうか。」
信じるんだ。 信じ深いね、ヅラは。 小さい頃から。 何でも(って訳じゃないけど) 信じる。
「と言うよりも、何で014を知ってんの?」
「今じゃぁ、巷が、ソレで騒いでる。 一般の天人も、014を欲しがってるらしい。
松山の実験結果が全て搭載された人間機械だ。
誰だって欲しがるだろう。まぁ、攘夷党にとっては、敵だがな・・・」
「何で?」
アタシは、即効ヅラに聞き返した。
「・・・・天人は、敵だ。 敵のほしがってる物も、敵だ」
「・・・・その天人が欲しがってる物が、一般の人間でも?」
「・・・・・??」
アタシは、振り向きなおして、門へ向かった。
「何処へ行く? 行く場所がないならば、俺のアジトn・・・
「銀ちゃん家。 行かなきゃ。」
「・・・・フッ。 銀時も驚くだろうよ。 お前が生きてるなんて知ったら」
「驚かせに行ってくる」
「・・・また近いうちに会おう」
「おう!」
アタシは、ヅラに手を振りながら、門を出た。
「あ!!!」
言い忘れてた事。
「!!! 何だ! 行き成り!」
「松陽先生、生きてるよ!」
「・・・・・」
「アタシの死亡通知書が偽物なら、先生のも偽物だからさ。
先生、生きてる。 ヅラの側で」
ソノ白い生き物。 真面目に怪しい。 親父の足見えるし。 キグルミっぽいし。
あ、でも。先生が逃げたのはつい最近だもんな・・・。
「・・・・・そうか・・・」
「それじゃね」
「あぁ」
アタシは、門をくぐり、屋敷内を出た。
懐にあるのは、すべての書類と地図。
お腹は空かない。 空は、まだ明るい。
早く、銀ちゃん家に急ごう。