止め処なく、自分の手首から流れ出る
血が気持ち悪いと思った。
意思と共に動く、自分の双眼が
気持ち悪いと思った。
何度試みても、死なせてくれない
自分自身じゃないかのような脳みそが、
気持ち悪いと思った。

風邪を引きやすい自分は、自分じゃない。
怪我をしやすい自分は、自分じゃない、他の誰か。

完璧じゃない自分の身体は、
自分のじゃない、他の誰かの体。


だから、気持ち悪いんだ。
自分自身が気持ち悪くて仕方がない。


思い通りに行かない、この体が忌々しくて、仕方がないよ。





「ねーねーぎんちゃーん。」
「なーんだー?」


片手にカッターを持った俺は、
目の前のソファで暢気にジャンプを読んでいる銀ちゃんに声をかけた。



あのね、あのね、あのね、

風邪薬と
鎮痛剤と
眠れる薬と
お腹痛く無くなる薬と
頭痛薬と
兎に角、いっぱい薬、持って来て。

「なーにすんだ、そんな薬のんで」
「だって、」



薬を飲めば、



風邪も引かないし
頭も痛くならないし
体中痛くなることも無い
良く寝れるし
お腹も痛くならないよ。


完璧な身体になれるでしょ?



「残念ながら、そんなに薬もってませーん、」
「じゃぁ、薬局行って来てよ、」
「あとでなー、」

約束、だよ?





(何が悪いなんて言わない)
(ソレを実行した後、お前が、お前自身が学ばなきゃいけないことなのだから。)






2010/06/27
ちいさい噺より再録。
口でどうのこうの言うよりも、銀ちゃんはやりたい事やらせた後の結果で男主を育ててると良い。という願望