本当の幸せが、其処に在った。 の存在自体が、結構俺に幸福を齎してくれてたりする。 それが、意外にも心地よいもので、傍に居る限り、守って見せよう、否、傍に居なくても、守って見せようと、何時しか天に誓った。 剣を握る、女のお前を。 はにかむ様に笑う、小さなお前を。 夜空の星を見て、秘かに涙を流すお前を、俺の手で、守ってあげたいと、護ってみせると、そう意地を張った。 そうしても、何も残らないとは、知らずに。
何が出来たかは、何時、何を思っても、知らない。 ただ、剣を握り直せば良かったんだとだけ、思う。 そうすれば、は、俺を庇わなくても、済んだ。 そしたら、は、死ななくても済んだ。 最期の、最期まで、痛い思いをしなくて、済んだ。 最期は、笑って、逝けたかも知れない。 最期は、俺を見て、逝けたかも知れないのに、 何処にも居ないはずの神様は、そう仕組んだ。
神の所為にしたって、何にもならないのは、知っている。 弁解にも、戯言にも、ましてや言い訳にすら、成らない。 だから、俺ァ、信じねぇんだよ。 神様なんて。 もし、祈って、何かが叶うのだとしたら、俺は何度だって、祈ってる。 また、同じような、幸せが傍にやって来る様に。 また、同じような日々が、戻ってくるように、と。 祈って、叶うのだったら、俺は、死ぬまで、祈ってる。
だけど、知ってる。 神様は、迷子。 何処にも居ねぇんだ。 ほら、また同じ季節が、廻って来る。 あの日のことを、思い出して。 遅かれながらの、バカな懺悔。 護ると誓った、この心は。 護ると誓った、この手は。 護ると誓った、この俺は。 愛のすっぽ抜けた、人間のような、亡霊。 この眼は、ずっと後ろを向いて、お前の笑顔を、幻像として映し出す。 お前が、生きているという真実だけで、 幸福だった。
それだけで、 充分だった。
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