攘夷戦争終盤間近、アタシは天然パーマのヤツに運よく拾われた。 刀が折れ、血もダラダラと止まることを知らない。 呆けて立ち竦んでいた所を、ソイツの上着で正気に戻った。 雨が降ってきたから、ソイツがアタシの頭の上から被せた。 「何してんだい、お嬢さん」 「・・・刀が折れた。」 地獄のような場所。 目を瞑れば、命はもう無い。 火薬の臭い、血の臭い、人が腐った臭いが、彼方此方でする。 地獄は屹度、此処よりマシな場所だ。 地獄は、此処の戦場。 何一つ、希望なんて無い。 助かる余地も、無い。 何も無いと言っては可笑しいが、在るといえば、死体のみ。 暫くして、歩いた。 その後を、ソイツが追いかけてくる。 アタシは気にせずにただ歩いた。 大きな木目指して、歩いた。 「・・・行く所、無いのか?」 「無い」 「・・・だったら、俺らと一緒に戦わねェ? 見方は、一人でも多い方が、良いに決まってる」 「・・・」 「いや、俺別に怪しい者じゃねぇよ。 近くの寺子屋門下生、坂田銀時だ」 「・・・」 「宜しくな? 殺戮の天使さん?」 「・・・!?」 「バレて無いとでも思ったか? お前だろ? 通り名:殺戮の天使ってのは」 「・・・」 「ビンゴか・・、ま、良いや! 宜しくな?」 出会わなければ 殺戮の天使でいれた 不死なる瞬き持つ魂 耳済ませた海神の記憶 失意にのまれ立ち尽くす麗しき月 よみがれ 永遠に涸れぬ光 君を知ったその日から僕の地獄に音楽は絶えない ◆ 「何してんだ、道のど真ん中で、立ち竦んで。 コンビニ行くのに、何時間掛かるんだ、お前の場合」 「何処に居てもそう。 眼を閉じれば、地獄の声が聞こえる」 「・・・」 「助けられ無かった者の声が聞こえるんだ。」 事実、何処に居ても、眼を閉じて立ち止まれば、 地獄の声が聞こえた。 叫び声に混じる、天人の笑い声。 大砲の撃たれる音、誰かの掛け声、風の吹く音。 「何でかな。 可笑しいね。 戦場じゃないのに、此処」 「お前にとって、眼を閉じてれば何処でも戦場か、コノヤロー」 「そうかも知れない」 「・・・・・・」 戦は何を生む? 神様は皆に、平等に悲しみを生むだけ。 戻らないものを、亡くして、人に絶望を味わせるだけ。 「ねぇ、銀。 あの日、拾ってくれて有難う」 「んだよ、急に」 「銀と出会わなかったら、ね」 「何が、ね、だ」 「銀と出会ってから、アタシの地獄に音楽は絶えないもん」 「・・・そりゃァ、良い事じゃねェか」 「だから、有難う」 「どーいたしまして」 「帰ろっか?」 「、だな。 新八と神楽、待ってるし」 銀が、アタシの持っていたコンビニの袋を持ち上げた。 アタシは、その後について行く。 まるで、アヒルの行進の様に。 銀の後姿は、見慣れたもんだった。 アタシは、一生、銀の後ろに居る。 彼が居れば、アタシの地獄に音楽は絶えないから。 総てが、悪に見える現在に、 アタシの地獄に音楽がずっと流れるように。
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