「おい! 銀! あれ、何だ?
 髪に棒ブッ挿してんぞ?」
「ブッ挿してるって、お前・・・
 あれァ、簪っつーんだよ。 女が髪を結う為に使う棒。」
「じゃぁ、何でアタシには無いんだよ? 女だろ?」
「お前には長い髪が無ぇからな」
「・・・、そういう理由か?」
「あぁ、そういう理由だ。」




久しぶりに、街を歩いた。
隣で歩くは、色んな珍しいものに、目をチラチラと寄せては、
俺に「アレは何か」と聞いてくる。



「なぁ、アレは何だよ。
 指になんか、嵌めてんぞ?」
「あれァ、指輪だ。
 最近流行り出したらしいぜ?」
「へぇ、カッコいい銀色だな。」
「・・・、あぁ、そうだな」
「なぁ、アレは?」






俺の袖を引っ張り、彼方此方へ行く。 文具店、甘味処、呉服店。
歩きつかれて、寺子屋に帰ったのは日は沈んだ頃だった。
これじゃァ、戦場に居るときと、察して変わらねェな、と思ったが。
それは、違う。
戦場に居れば、俺はいつでも神経を尖らせなきゃ行けねェ。
何時殺されるか分からないからだ。
だが、此処に居れば。
俺は、何時だって鎧の紐を解けるんだ。
















その、温もりが何時しかなくなった。
























お前が、以前ずっと欲しがってた指輪を見つけた。
街の外れ、知ってたけど行った事もない、古い店。
指のサイズ、コレであってっかな?
包み紙が、ちょっとチャちいんだよな、コレが。


でも、そんなこと。
此処に、お前が居なきゃ何の意味さえない。
沈む夕日に、ゆれる星空
まるで、ガラクタだな。
お前のくれた日々、甘い記憶も残る言葉も、もう無い。







そんな人もう居ないから
本当に大切にすれば良かった者
俺自身に残された時間、そんなもの。
此処にお前が居なきゃ何の意味さえない。
朝の日差しに、心地よい風。
世界が抜け殻の様に見える。






安っぽい箱から取り出した、指輪は銀色に光ってた。





何度も戻りたいなって思う度、一人で向かった。
あの丘に、待ってた日々会いに行った。



今じゃ、きっと変わった、俺らの歩いたあの街並み、
人達も春夏秋冬変わらず、此処に在るはず。


見上げた空に、手を伸ばし。
そして、また歩き出す。







光るのは、空にかざした、銀色に光る指輪。






俺は、それを弾き、の墓の前に落とした。



片方は、お前が持ってろ。




もう片方は、俺が持っててやるから。









此処に、君が居なきゃ、





011409