俺は、温もりも知らない。
ただ、知っているのは唯一、お前のさっきまでの、温もり。



俺は、偶然と出会った。
血の舞う戦場で、しゃがんで座り込んでいるに俺は、紛れもなく手を差し伸べた。





なぁ、俺はを幸せに出来たか?
毎日、毎日、戦場に行くことを、止めればよかったよな。
そしたら、お前は死ななかった。 だろ?




何が悲しいと聞かれたって、何も悲しんでなど居ない。
丁度、俺の太陽だったが、少し遠くなっただけだ。




俺は、握っていたの冷たい手を俺の額まで持って行った。
涙が止め処なく、流れる。
俺はな? 今、泣く事しか出来ないんだ。
投げ捨てた刀と鉢巻に、上着は廊下に放っておいた。
急いで帰ってきたんだ。 だけど、お前は冷たくなってたよな。











記憶を辿る過程で、
あどけないが移る写真に、俺が認めたのは、俺が所詮、護る事すら知らないこと。
今では、声を失くしたお前が目の前に居るだけ。


?」




返事、するよな? 何時もの様に。
振り返って、笑って、 「銀ちゃーん!」 って、言ってくれる、笑顔の

なぁ、お前の最期位、希望を持たせろよ、な?


かすかな希望と裏腹に、ごく当たり前の白け切った、夕日を迎えた。



















一人きり置いて逝かれたって、サヨウナラを言うのは可笑しい。
ちょうど、太陽が去っただけだろ? 赤く染まる空と共に。
が逝っただけだ。 遠いところに。 体は、此処に置いて。







早く、返って来いよ?
高杉に、怒られちまうからさ。
アイツ、お前の事、結構気に入ってたらしいぜ? ほら、お前強いからさ。
ヅラのさ、教えてもらいたいレシピも、まだ書き終えてないんだろ?





なぁ、あんなにも月日が経つのに、お前との想い出が凄く少ない。














お前は、生まれ、俺に偶然出会い。
春を憂い、秋を見た。





















俺と、お前は。
雨を嫌い、何時も笑い、此処に居た。
確かなのは、ただ唯一。
の小さな温もり。






「ぎん・・・、とき? 貴様、何をしてる。
 其処で寝てるのは・・・、・・・、か?」







ヅラの声で現実へと戻ってきたとき、
俺は、ひとつ、小さく冷えてゆく、の体を抱いた。






落日
rakujitsu/tokyo incidents
021009