高鳴る鼓動。
走りに、走ってみた。
パシャンと、水溜りを踏む音。
跳ね返る水滴が、足袋に着いた。
◆
「銀時が、行方不明になった」
「はっ? 何言ってんの、ヅラ。 高杉は? 一緒じゃなかったの?」
「一緒だった。 が、気付いたら居なくなってた。」
「おんしら、正直に言ったほうが、ええ」
「何が、正直? 居なくなったんでしょ? 探しに行くよ、アタシ。」
縁側で、日向ぼっこをしていた。 体調が悪い所為で、戦には出てない。
門から、帰ってくるのは、何時もの3人。 もう一人、足りない。
「正直って? 本当はドッキリとか?」
「、落ち着いて、聞くがや」
「なに? ドッキリ?」
「ドッキリじゃねェ。」
「実はな、銀時が死んだ」
そのヅラの一言を聞いた瞬間、アタシは飛び出した。
腹が、キリキリと痛い。
刀は腰に挿していないため、行き交う人にぶつかった。
謝ってる暇は無い。 早く走れば、届く。
消え入りそうな、生命に。
走った。
戦場を。
休むことなく。
走り回った。
息が切れた。
心臓が痛い。
あせった、凄く。
名前を叫んでも、敵を呼ぶだけで。
愛おしい人の声はなかった。
____________ズシャッ
「いっでッ!」
足が、何物かに躓き、肘から転んだ。
人の気配がして、立ち上がる事無くアタシは刀を、構えた。
でも、それは、立ってる人の気配じゃなくて、
アタシの足が躓いた、何者だった。
「ぎ、・・・んとき?」
薄く開いた、目。
小さく開いた、口。
手に握られている、刀と、鞘。
何度、名前を呼んだんだろう?
もしかしたら、起きるかもしれないって、思った。
だから、叫んだ。 何度も、何度も、何度も。
だけど、時間が経つにつれて、銀時は、冷たくなった。
いつも、暖かい手をしてたのに、冷たくなった。
時間が経つにつれて、握っていた手も、重くなっていった。
手が、動かなくなっていった。
「最期は、此処じゃなくて、戦場じゃなくて、」
アタシと一緒に死んでよ。
君が居た、思い出。
090315