高鳴る鼓動。





















走りに、走ってみた。













パシャンと、水溜りを踏む音。
跳ね返る水滴が、足袋に着いた。

































「銀時が、行方不明になった」
「はっ? 何言ってんの、ヅラ。 高杉は? 一緒じゃなかったの?」
「一緒だった。 が、気付いたら居なくなってた。」
「おんしら、正直に言ったほうが、ええ」
「何が、正直? 居なくなったんでしょ? 探しに行くよ、アタシ。」





縁側で、日向ぼっこをしていた。 体調が悪い所為で、戦には出てない。
門から、帰ってくるのは、何時もの3人。 もう一人、足りない。







「正直って? 本当はドッキリとか?」
、落ち着いて、聞くがや」
「なに? ドッキリ?」
「ドッキリじゃねェ。」
「実はな、銀時が死んだ」













そのヅラの一言を聞いた瞬間、アタシは飛び出した。







腹が、キリキリと痛い。
刀は腰に挿していないため、行き交う人にぶつかった。





謝ってる暇は無い。 早く走れば、届く。















消え入りそうな、生命に。





































走った。



戦場を。



休むことなく。



走り回った。



息が切れた。



心臓が痛い。



あせった、凄く。



名前を叫んでも、敵を呼ぶだけで。



愛おしい人の声はなかった。


























____________ズシャッ












「いっでッ!」









足が、何物かに躓き、肘から転んだ。
人の気配がして、立ち上がる事無くアタシは刀を、構えた。












でも、それは、立ってる人の気配じゃなくて、




















アタシの足が躓いた、何者だった。

















「ぎ、・・・んとき?」












薄く開いた、目。
小さく開いた、口。
手に握られている、刀と、鞘。








何度、名前を呼んだんだろう?
もしかしたら、起きるかもしれないって、思った。
だから、叫んだ。 何度も、何度も、何度も。









だけど、時間が経つにつれて、銀時は、冷たくなった。
いつも、暖かい手をしてたのに、冷たくなった。









































時間が経つにつれて、握っていた手も、重くなっていった。
手が、動かなくなっていった。























「最期は、此処じゃなくて、戦場じゃなくて、」




アタシと一緒に死んでよ。













君が居た、思い出。

090315