もっと、話していたい。
いつか、お前が居なくなって、後悔しないうちに。















ずっと、笑っていたい。
きっと、未来の俺は、ずっと泣いているから。

















ずっと、手を繋いでいたい。
お前の手が冷たくなる前に。














ぎゅっと、握り締めていたい。
お前が、灰になる前に。















お前が居た、日々をもう一度だけで、良いからと。
毎日願うだけ。


















もしも、願が叶うのならば。
もしも、この俺に奇跡が起こるのならば。
俺は、いつまでも、お前に会いに往く。















俺等の交わした最期の会話が、あんな日常な物では、
心デカイ俺には、足りな過ぎる。

















お前と、俺が居た寺子屋も。
もう、誰も居ないのに。 もう、他のものが建ってるのに。
お前と俺の昔の面影を重ねるんだ。
ここで、バカやりやったなとか、此処で喧嘩したなとか、此処で4人一緒に居たなとか。

















頭を埋め尽くすのは、困り顔のヅラと、得意げに笑う高杉と、俺。
いつでも笑っていた、の顔。
春の優しい色、真夏の奇麗な空、秋に彩る紅葉、全てを真っ白に染め上げる冬。















心を埋め尽くすのは、言えない言葉と、言いたい言葉。
最期に交わした、何の変哲も無いと俺の会話。























目を埋め尽くすのは、醜い涙と、が最期に笑った、儚い笑顔。




















俺は、何を護れたんだろう?
との約束?
俺の側に居る、仲間?

















何もかも違う。
俺が今まで護ってきたものは、俺自身だけ。





















































血が止まらない、の体。
咳をする度に、吐血した。
医療の心得なんて、無い俺は、抱き上げる事しか出来なかった。





















最期の、最期まで、俺をみて微笑む、
なぁ、何かいう事無いわけ?
今朝した、あんな変哲も無い会話が、俺等の最後?

























可笑しいな。
俺、言いたいこと、いっぱいあるのに。


死にそうなを抱き上げたら、言えなくなっちまった。






















馬鹿の一つ覚えみたいに、俺、今、
お前の名前、叫んでるの聞こえてるか?























伝えたい事、いっぱいあるのに。
今の俺の口は、お前の名前を叫ぶしか、術は無い。



























?



俺な、本当は弱いんだよ。




俺は、強くなんか無い。


























?


俺な? ずっと、お前の事好きだった。




なんて、ベタな事を言ったら、きっとお前は、笑い返す。







































春風が、ブワッと吹いた。
俺は、勢いの余り目を閉じた。

目を開けたら、微笑んだが、見えるだけ。





























血塗れの、俺の手。

人が死ぬって、こんなにも
儚くて、悲しくて、虚しいものなんだと、
今更、気付いた。








悲しみは、誰だって一緒。












春風

090315