あの日以来、は、来なくなった。 プツリと、音がしたように、一瞬にして崩れた、俺等の日常。 俺は、当たり前の様に、つまらなくなった。 遊ぶ相手が、いない。 話す相手が、いない。 それは、何よりも耐え難い、こと。 いっそのこと、死んじまったら、楽かもしれないけど、愛刀が無い。 地面に、丸を描いて、それを飛び越える。(ケンケンパ、ケンケンパ。 つまらねェや。 そんなつまらない一人遊びを、繰り返していた。(一人増えれば、面白い遊びなのに。 何時もの様に、鳥居の上に座ったり。 階段に座ったり。 何度も、何度も、一人で見る沈む夕日は、同じように見えて、つまらない。(アイツさえ居れば、毎日違うのに つまらない遊びをしていたら、向かい側から、子供が手を振ってきた。 俺は、そいつが俺の事を見えるんだと、思い。 手を振り替えした。 それでも、そいつが手を振ったのは、俺じゃなく。 俺の後ろに居た、他の子供だった。 そいつは、また俺の体を透き抜ける。 ああ、俺は透明人間。 そして背後で、交わされる会話は、残酷。 「ねぇ、知ってた? あの、余所から来たって子。 引っ越すんだって」 「え? 本当?」 「うん。 孤児院に行くんだって。 隣村の、でっかいところ」 ◆ 「ひさしぶり!」 「おっ! 久しぶりじゃねェか!」 次の日、は、何時もと変わらぬ笑顔で、何時もの場所に来た。(何よりも、安心。 俺は、小枝を使い、地面に落書きをしていた顔を上げた。(ほら、俺は元気だったぜ? 「〜!!!!」 「うわッ!」 「ほれ! こっち来い!」 「ちょっ! まって、ぎんとき。 伝えなきゃいけないこと、あって、来た」 「・・・」(うん、知ってた 「あたし、孤児院行くんだ」 「・・・」(一人になることを望んでないだろ? 「会いに来てくれた、院長先生は優しい人だったし、あの家から出られるから、なんていうか・・・」 「・・・」(ああ、言うんだろ? 其の言葉を 「あたし、嬉しくって!」 「・・・」(ほら、言った。 俺は、の手を握ったまま。 お前の伝えたい事がなきゃ、此の侭何時ものように、連れ出して遊んでいたのに。 俺は、一歩よりも前に居る。 は、一歩俺よりも後に居る。 ああ、置いてゆかれる。 俺が此処に居たことを知っている奴が、俺を置いて行く。 俺は、馬鹿だ。 はいつまでも、子供じゃない。(子供じゃなくなったら、俺の事が見えない。 天涯孤独なのは、俺とだけかと思ったのに。 天涯孤独なのは、俺の方じゃねェか。 耐え切れなくなり、手をそっと離し、俺は走った。 ◆ 離れる事を告げられて、3日後。 が、また何時もの笑顔で、何時もの階段に、来てくれた。 3日の間、俺の頭の中に回る思考は、 もう、行っちゃったのか? とか、 行く事を考え直してくれねェかな。 とか、 そんな、事ばかりだった。(ああ、考え直してくれれば、良いのに。 「かくれんぼ、しよ?」 「・・・」 「いーち。 にーい。 さーん。 あたしが、鬼やってあげるから。 はやく!」 「・・・」 「よーん。 ごーお。 ろーく。 なーな。 はーち」 。 俺な、本当はさようならが出来るんだ。 ただ、俺の姿が見えなくなって、 忘れられる事が、つらいんだ。 いつまで、数えているんだろう、数字を。 かれこれ、15まではいった。 それでも、俺は小さい背後から、離れなかった。 「ぎんとき見つけるなんて、簡単だし」 「かくれんぼになってないじゃん!」 何時かの会話が、鮮明に耳に聞こえる。 俺は、ギュッとを、抱きしめた。 俺が抱けるのは、お前だけなんだよ。 きっと、これからずっと、其の先も。 お前だけなんだよ。 腕に伝うのは、の涙。 俺は、そっと離れて、かくれんぼの続きをした。 ____________________ブロロロロ ___バタン 「ああ、ちゃん。 此処に居たんだ」 「・・・うん」 なぁ、俺には、お前が確り見える。 でも、お前には俺が見えないだろう? 何処に隠れたか、ほら、今日は見つけられないだろ? 今日だけは、俺の事、見つけられないだろ? 「ぎんときー! もーいいかい?」 もういいよ。 そんな返事は、しない。 ほら、コレが俺らの さようなら だ。 「何を言ってるんだね? 」 「なんでもない」 またあなたに逢えるのを楽しみに待って さ よ う な ら 終焉です。 元ネタ;加納るり からすら 一部、脚色、有。 090404 |