青い空。 白い雲。 その下で、万葉集片手に走る、 我等3z、3班のメンツは、既に息が上がって居ります。 我等が3班には、アタシ、土方、神楽、新八の4人。
禁煙厳守
ゼェゼェと、息が何時も異常に上がった。 万葉集を詠みながら、校庭3周。 1周だけでも、400mはあるから、3周走って、1.2キロ。 何時もの冗談の、「罰ゲームとして、万葉集詠みながら校庭走る」かと思って、軽く流したら、 銀八が、「え? 本気に決まってんだろ」と、一言。 ふざけんな! 講義しても、もう遅く。 銀八は聞く耳すら持たなかった。 腹いせに、睨みを効かせたら、口パクで、「お前の所為だ」と銀八に言われた。 事件は、昨日の昼休み。 屋上のドアが開いているのを良い事に、アタシは煙草を吸っていた。 もちろん、普段開いていない屋上のドアに、疑問を持ったが、 それも、吸いたいと言う欲望にかき消された。 家に帰っても吸えない、路上でも吸えないし、放課後でも、制服姿だから、吸えない。 だから、少しだけ、学校で吸おうと思った。 その後の授業は、サボる。 それでイケると思ったのが、大間違い。 頭を急に捕まれ、アタシはそっと後ろを振り返った。 「何してんの?」 「・・・」 何してんだって、聞いてんだ」 「・・・(汗」 口を、ポッカリ開けて、アタシは銜えていた煙草を、地面に落とした。 その煙草は、運悪く、先生の足の上に。 もちろん、先生は、安物のサンダル。 しかも、足指が見えるタイプのサンダルだった為、先生の足指先に、煙草が、ポトリと落ちた。 言って置く、わざとじゃないからね。 先生の足が其処にあるのが、悪いんだからね。 「アッヂ!! アヂぃよ! てめぇ、何すんだ マセ餓鬼ィィィイイ!!」 「根性焼き?」 「足? あえて、足? 普通は、腕だろぉが!」 「じゃぁ、先生の腕で、火ィ消す・・・」 「しなくて、良いわ! フザケンナ! あれな、明日、お前の班、万葉集詠みながら、校庭3周な」 「んなっ!」 「ざまぁ、見ろ。 マセ餓鬼」 「うるせー、水虫」 「俺ァ、水虫じゃねぇ!」 「じゃぁ、サンダル」 「これ以上行ったら、5周に増やしてやるよ」 「・・・」 「じゃぁ、次の授業、出ろよ。」 どうせ、何時ものジョークだと思ってた。 万葉集を詠みながら校庭走るとか、何とか言っていても、実現されなかったのが、過去だから。 だから、嘘かと思ってたら、今日の昼休み。 何故か、ソレをやらなければ成らなくなった。 3周目、ラストラン。 同じ班の喫煙家、土方君は、息も上がっておらず。 羨ましくも、妬ましかった。 「何で、息上がって無いの?」 「あ? 普段、鍛えてっから」 「・・・」 「腹筋でもしときゃぁ、肺活量なんて、お手の物だぜ?」 誇らしげに笑う彼を、殺したいと思ったのは、一瞬だけで、 アタシは、校庭に寝転んで、傍に歩み寄った銀八を見上げた。 「ざまぁ、見ろ」 と言わんばかりの顔は、見ていて、ムカつく。 「その顔、ムカつく」 「ざまぁ、ねぇな。 お前」 「うるさい」 「早死すんぞ、そんなスパスパ吸ってたら」 「良いもーん。」 「・・・」 他の班の子は、息上がることなく、校庭を去った。 え? アタシだけ? 息が上がってんのは。 アタシだけな訳? 何か、疎外感。 肺活量、そんな低かったっけ? そう言えば、煙草吸ってから、肺活量下がったかも。 肺まで吸い込んだ、煙がどんな害を及ぼそうが、関係も興味も、あまり無かった。 「立て。 昼休み、終わっちまうぞ」 「・・・立てねェェェエエ!! 先生、起こして?」 「可愛く言っても、無駄。 起きろ、自力で」 「・・・・ちぇッ」 「自分で、今の自分を作り出したんだろ。 煙草なんか吸いやがって。 肺活量、減るぞ。」 「・・・ブー」 ブーイングにも、軽く流す銀八の目が、少し怖くなった。 何時もの、不真面目な目は何処へやら、先生が真っ直ぐにアタシを見据えた。 「2度と、苦しい思いをしたくなかったら、喫煙するこったな。 禁煙は、20歳まで禁止なんだよ、法律で。」 「アタシ、煙草、もー止める」 「そーしろ、バカ」 「だって、万葉集詠みながら、校庭3周、キツいもん」 「理由は、どーあれ。 もう一回、こんな事したく無いなら、止めるこった。」 「うん」 そう言って、先生がアタシに手を差し伸べてくれた。 手先には、飴玉ひとつ。 「吸いたくなったら、コレでも舐めてろ」 「はーい」 |