急いで走った。 何処かに住んでいる動物のような速い足は持っていないが、一生懸命目的地へと足を走らせた。 切れる息も気にせずに向かってくる天人を斬り、そして前へと進む。 暗い空は、気分を悪くさせた。 ヅラが言うには、雲が低い位置にあると空気圧もなんか違うとかで、気分を悪くさせるらしい。 そんな事、まじめに聞いていなかったし、然して気にもしていなかったから聞き流していた。 手にある鞘で、敵を殴っては道を開け。 別の手にある刀で、敵を斬っては道を開けて、真っ直ぐ走った。 辿り着いた屋根上に横たわる銀ちゃんはド頭から血が流れている。 流れ出ている血は体内に戻るすべを知らずに地に色を付けた。 鮮やかな、黒いような、赤い、血。 「しんじゃうよ、ぎんちゃん」 「そ、だな。 うん、おれもがんばったほうだよ、うん。」 「そだね、」 「おまえこそ、けが、だいじょうぶか」 「うん、だいじょうぶだよ。・・・きっと」 「そっか」 「うん、」 「おれがしんだらさ、ほねはかぜにまいとけよ」 「いいよ、づらといっしょにやってあげる」 「そりゃぁいい」 「うん、」 「・・・・・・」 「なに?」 確りと目を見て。 確りと手を握って。 確りと銀ちゃんがまだ其処にいる事を感じて。 未来と書いて”不確か”と読む先で、また貴方に出会えると信じても好いですか? 銀ちゃんは、絞り出すような声で、こう呟いた。 冗談抜きで、「いってらっしゃい」とそう呟いてみた。 |