意を決して、万事屋銀ちゃんの家のチャイムを押した。  バタバタと騒がしい足音の後に、ガラッと勢い良く戸が開く。  見えた笑顔は、女の子、男の子、其れの後ろに、当の銀時。



銀「・・・あぁ、此処まで来たの?」
新「知り合いですか? 銀さん」
神「依頼アルか?」
「・・・依頼といえば、依頼かな」


そう、言った後女の子は、キャッキャ騒いで、中へ入るようにアタシの腕を引っ張った。 急いで、下駄を脱ぎ、中へ通される。


神「んで? 何用アルか?」
「銀時、晋助の刀を返せ」
銀「・・・」
新「・・・えーっと、僕達邪魔っぽいので、外出てます」
神「・・・」
新「神楽ちゃん、行こう」


男の子が女の子の方を押して、リビングから出た。
玄関の戸が静かに閉まる音と同時に、銀時は口を開いた。



銀「まー、こんな所まで、ご苦労なこった。
 お茶でも飲むか? 俺、淹れてやr
「焦らさないで、返して。」
銀「・・・返したところで、その刀を如何する心算だ」
「・・・」
銀「自害か? その刀で敵討ちか? 洒落てんなァ、おい」
「生きる」
銀「口先だけじゃねェよなァ?」
「・・・」




久しぶりに見た銀時の顔は、眼が死んでいた。
それでも、総てを射抜きそうなその態度は、全く変わらない。
和洋折衷な、変な衣類に、腰の木刀。
傍に置いてあるのは、ジャンプと書かれた本。



銀「テメェは、何が為に、
 此処まで高杉の刀を探してたんだよ?」
「最初は、簡単にアンタを見つける心算だった。
 そんで、死のうって考えてた。
 でも、アンタは、アタシに生きろって言ってるように、
 近付けば遠退いて、アタシを生かす」
銀「バレてたか」
「知ってたんでしょ?
 アタシが晋助の刀以外で死にたくないって」
銀「当たり前だ。
 だから、今まで、お前が近付こうとすると、
 俺は決まって遠退いてる。
 お前に、生きてもらうためにな」





銀時は立ち上がり、糖分と書かれた額の裏から、
一本の古い刀を出した。


見間違えるわけが無い、其れは、晋助の刀身。










銀「高杉は知ってたんだよな。
 アイツが居なくなれば、お前も死ぬって。」
「・・・」
銀「だからよ、アイツ、死ぬ前に俺に言ってきたんだわ。
 何が何でも、を生かせって。
 自害しそうになっても、何が何でも止めろって。
 生かせ、生かせ、アイツだけは、生かしてやれって」
「・・・晋助が?」
銀「そ、高杉が」
「・・・」
銀「俺は、アイツに言われたとおり、お前を生かした。
 もちろん、これからも死なせる心算は、無ェ。
 銀さん、寛大だからね?
 高杉の言う事聞くの、これが初めてなんだぞ、コノヤロー」





持ってた刀身を、アタシに投げつけた。
其れを片手で受け止め、両手で握った。
何が何だか、分からないよ、晋助。
自然と零れる涙を銀時に見られたくないから、背を向けた。




銀「泣きたきゃ、泣け。 誰も、見てねェよ」
「・・・」

























泣き止んだ頃は、もう夕方で。
眼の周りが真っ赤になっていた。 洗面所を借り、顔を洗う。
銀時にしちゃぁ、奇麗な家。
台所も、風呂も、便所も。
一人暮らしには、でかい様に見えた。









背後に人の気配を感じ、アタシは振り向いた。
壁に寄りかかってる、銀時は、
小窓から見える夕日を見ている。














銀「俺さ、死人との約束は、不本意だけど、守る」
「・・・?」
銀「それが、たとえウザい高杉でも、守る」
「だから? 何」
銀「だから、お前、此処に住め。
 そうすりゃぁ、一日中、観察できるし、
 守れるし、生かせられる」
「・・・え・・・」
銀「自害しようとしても、止められる」
「・・・もう、しないよ。 そんなこと」
銀「・・・?」







生きたいと、願うから、




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