その日病院に連れて行ったら、即入院だった。
ババアに電話したら、色々手続きをしてくれた。
傍に居てやんな。と言われ、の傍に居た。
は次の日の昼ごろ、やっと目覚めた。
点滴が痛々しいが、何も出来なかった。
本人はいたって元気なもので。
この世界に来ても、お前の病気は治って居ないんだと、気付いた。
病院漬けだった、前の世界よりも、もっと楽しい思い出を作らせようと、思ったのに。
何故、は此処に居ても同じ道を歩くのだろう。
少し、違う意味で、胸が痛くなった。
つい先日出会ったばかりなのに・・・。
「おれねー、さいきんげんきなのー」
「そうか、そうかー。 薬飲もうな?」
「んー? 飲んだよ」
「そう? じゃぁ、ジャンプ貸して上げる」
「それ、先週のだよ」
「あ、じゃぁこれか?」
「うん、それ」
手に受け取ったジャンプは何故か重かった。
銀ちゃんは、毎日此処に来てくれる。
お登勢さんも、時々来てくれる。
不自由がないように、と色々よくしてくれる。
それが、温かくて心地よかった。
「重いねー」
「少年の夢が詰まってるからな」
「そっかー」
「それより、薬飲まなきゃ駄目だろ。」
「うーん」
「嘘ついちゃ駄目だろ。」
「うーん。 でも元気が無いのは本当だよ?」
元気が無いのは、きっと
(雨のせいだよ)。
そう信じてる。
「早く好くなるから、飲もうな? 薬」
「うん、」
治らない病気でも、銀ちゃんが好くなるって言ってくれるから、
(ありふれた嘘)でも、
信じるよ。
早く止まないかな、雨。
< 『ちいさい、噺。』より再録 >
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