「、戸締り確りすんだぞ」
「知ってます」
「ガスとか、勝手に使うな」
「食堂行かないし」
「誰か来たら、最初っから刀抜いてて良いからな」
「副長、早く行けよバカ」
「お前、今なんつった」
「バカ」
「どこで習った、んな言葉!」
「総悟」
「殺す、」
「いってらっしゃーい」
を一人だけ屯所に残すことになった。
何時もは、誰かいるのだが、盆休みで女中もいない。
隊士の半分は帰省。半分は今日の仕事で俺に付いてくる。
総悟は先に行っているが、近藤さんは朝っぱらから、消えていた。
大方、どこぞの姉貴に求愛行動だろう。
だから、本当に一人。屯所に、独り。
今までになかった。誰かしら、屯所には残っていた。女中なり、山崎なり、隊士なり。
まぁ、今日はいないのだ。何とかなるだろうと思ってた。
帰ったら、屯所が荒れていた。
障子は破け、傾いている。 中には、全壊の襖も。
俺らはびっくりして、中へと急いだ。
「!」
「おーい」
間抜けた声が、中から聞こえる。
ひょっこり出てきたのは、寝起きよりも酷い髪をした。
「何してんだ、テメェ。説明しろ。」
「ネコです」
「あ?」
「ネコが来たんで、捕まえようと思ったら、暴れて、走り回ったんで、追い掛け回してたらこうなりました」
「反省文書けよ」
「書かないですよ、だって、ガスだって弄って無いし、誰も来て無いから刀も抜いて無いし。」
イライラして、タバコに火をつけた。
隊士達は黙々と復旧作業。何も命令して無いのに、優秀な奴等だった。
「んで、ネコは」
「倉庫の中に入った」
「、、、鍵もねえのにどうやって」
「倉庫の、上の、あの、ほら! 窓から、にょっきり入ったんですよ」
「、、、なんだよ、にょっきり、って」
「いいじゃないですか」
俺は、倉庫の確認の為、そのまま回れ右をした。
そしたら、も着いてくるもんだから、そこは無視した。
ちょくちょく後ろに付いてくるのは良いが、ヒヨコじゃねぇんだから。
「ここです、ここです! ほら、ね! 鳴いてる!」
にゃーにゃーと、微かではあるが、鳴き声が聞こえた。
「マショマロ食べますかね」
「食うわけねぇだろ。 喉つまらせて、死ぬわ」
「うーん、はぁ、お味噌持ってきますね!」
「何で味噌ぉぉおお!?」
「なめたら、美味しいから?」
「疑問を疑問で返すな! 良いから、牛乳もってこい」
「だってあれのだもん!あげないもん!あれで最後の牛乳なんだし!」
「後で買ってやるから、もってこい。ネコがかわいそうだろ」
「しょーがないなーもー」
そういいながらも、新しい牛乳を買ってもらえると聴いた瞬間、
嬉しそうな顔をした。現金な奴。
数分後、お茶碗の中に牛乳を入れたがやってきた。
「暖めて、砂糖入れてきました!」
「そーかい」
俺はそれを受け取り、鍵を取り出して倉庫を開けた。
暗い部屋には、猫の姿は見えない。
「何色だった、そのネコ」
「白!だから、白って名前つけたんですよ!」
「、、、何やってんだオメェは」
「可愛いんです!!赤い紐がくびについてて、きれいですよ!」
「、、、飼い猫か」
「飼い猫?」
「誰かのネコってことだよ、」
俺はお茶碗の中の牛乳をこぼさないように、慎重に歩きながら、倉庫に入った。
物と物の間に、見事に挟まっている猫がいた。
俺は、そのまま茶碗を差し出して、飲ませたら、案の定、飲んだ。
鳴き続けて、喉が乾いたらしい、鳴くのをやめて飲んだ。
「のみました?」
「飲んだ、」
「じゃぁ、出してください。アタシのです」
「お前のネコじゃねぇよ」
「だって、アタシがみつけたんだもん」
「結果的には俺が助けてんだろうが」
「うー、」
「飼い猫だ、一時保護のときだけ、お前に預ける」
「誰かのネコって事は、返すんですか?」
「あたりめぇだろ」
「じゃぁ、そうする」
「何をだよ」
さも決定権がに有るような言い草。
俺は、からになった茶碗を1回に預けて、ネコを取り出した。
埃のせいで、汚くなっているネコ。
「あーあ、真っ黒!」
「しょうがねぇだろ、此処、埃だらけだし」
俺は、隊服についた埃を払いながら、のネコを見つめた。
赤い紐っつーか、首輪だろ、コレ。
なんだよ、紐って、バカか。
「ま、寝ぼけて踏み潰して殺さないようにな、」
「そんなことしないです」
は大事そうに、ネコを撫でた。
「名前、変えようか」
俺の後ろを歩きながら、ネコに話しかける。
「何で変えるんだよ、」
「真でいいや!」
「なんだそれ、」
「真選組の、真ですよ」
「、、、白は」
「だってその名前は、白いときの名前だもん。今黒いから、アタシ達と同じ隊服みたいでしょ?」
「洗ったら、白くなるぞ、そのネコ」
「へー、すごい」
「本当、バカだな、お前」
「黙れ、バカ」
「あぁ、そういえば、反省文」
不貞腐れるに代わって、黒く変身した猫がにゃぁと返事した。