新しい、気持ち。
副長が、知らないこと。
あの日以来、あの女中さんが、副長の傍にいた。
「あ、お早う御座います。助勤。」
「おはよう」
嫌いじゃない。
だって、この人、アタシの嫌いな物、好きじゃないし。
むしろ、この人は、アタシの好きなものを同じく好きな人。
そんな変なこと、考えるのを辞めて、頭を振った。
頭いたい。気持ち悪い。
_____バンッ!
「ふくちょー!あさ、、、あ、もう起きてたんだ」
そういえば、今さっきの女中さん、副長の部屋から出てきたもんな。
「朝っぱらから叫ぶな。」
「すみません、」
「、、、お前、」
「先、朝ごはん、食べに行きます!」
副長の顔、見たくなくて。
今までの副長が、どっか行ったみたい。
好きな副長が、どこにもいない。
笑った副長と優しそうで頭の良い女中さん。
あの2人が一緒に居ると、どうしても、どうしても、気分がよくない。
頭痛いし、気持ち悪くなって、屯所から逃げたくなるけど、
屯所から逃げたら、副長がアタシに対して怒る。
それはきっと、嫌われちゃうから、我慢するけど、何かが無くなった気がした。
「どうしだんでィ? 真面目に飯食って」
「アタシいつも真面目にご飯食べてるもん」
「、、、土方のヤローのことですかィ?悩んでるのは」
「悩んでないもん」
「悩んでまさぁ」
「ちがうもん」
「癖、でてますぜぃ?」
何時の間にかご飯粒を1個1個お盆の上に並べてた。
アタシの癖らしい。
「それは、今日、何粒のお米が入ってるかなって、」
「普段はしないだろィ」
「、、、違うもん」
「ま、副長の事ァ、気にしない方が良いでさァ」
「でも、アタシ、いつも一緒に仕事するじゃん。気にならないの可笑しいよ」
「まぁねぃ、、、」
「もー、いい。 後で副長に会ったら、今日お休みするって言ってね」
「へいへい、」
「真と遊んでくる」
「、、、さびしいやつ」
「うるさい、ウンコ!」
「飯くってるんですけどねィ、、、」
「、、、っ! ゴメンなさい」
「気持ち悪いほどに素直ですねィ、最近は」
「しらない!しらないもん!どうでもいいでしょ!」
好きって言ったのに、全然痛いのが治らない。
自分が無力に見えてきた。
そういえばそうなんだ。
頭悪いし、副長に迷惑かけてばっかりだし、
怒鳴られてばっかりだし、何一つ、アタシが副長の傍にいて、良い事なんか無いんだ。
そう思いながら、真の居る庭の隅のダンボールへと向かった。
そこは、小さな真の家で、丸くなって寝てた。
アタシは、真を着流しの中に入れて、顔が首元から出て息が出来るようにして
屯所を出た。雨が降りそうだけれど、傘は邪魔だから持たない。
マショマロがなかったんだ。買いに行かなきゃ。
副長に頼んでばっかりじゃ、ダメなんだから。
ニャーニャーと心細く鳴く真を宥めてから、
アタシは屯所の門を潜った。
心なしか、外が寒い。
こんな空の色、嫌いだ。