思いがけない、出会い。
静かに、静かに、幕開けが開く。
胸元に、真の暖かさが篭る。
街の人は、幸い少ないが街行く人が、アタシの胸元にいるネコに驚きながら見た。
アタシは、気にせず歩いた。
雨が降るのか、人が少ない。
副長のことが、頭を駆け巡る。
そんな自分が気持ち悪くなってきた。
歩きたくなくて、立ち止まったら、雨が降ってきた。
「どうしよう、雨降ってきちゃったね。」
アタシは、真の額をそっと撫でて、裏路地へ回った。
真がぬれないように、早歩きで歩いた。それでも足は屯所と反対の方向を歩いた。
目の前から、金髪の女の子が歩いてくる。
その後ろに、黒い眼鏡をかけた、三味線を持っている人。
「あ!ちょっと!其処の女!」
無視しようと、その人達とすれ違った後も、スタスタと歩いた。
真は心配そうに、鳴く。
「ちょっ、なんですか!」
肩を捕まれたアタシは、振り返り女の人と向き合った。
おへそ、出してる。 寒そうに。 あぁ、でも傘があるから大丈夫か。
「それ!うちの猫っすよ!」
「え?」
「あぁ、そういえば、逃げたままでござったな」
「違いますよ、人違いです」
「私はネコの事いってんスよ! 言うなれば、猫違いでしょ!」
「じゃぁ、猫違いで」
「いや、見間違える分けないで御座るよ。」
三味線を背に担いだ人が、何食わぬ顔で、アタシの胸元にいる真の首根っこを掴みだした。
「あー!やっぱり!これ、私が特注で作らせた首輪ッスよ!」
「、、、どこにだってあるじゃん、」
「何ゆえ特製なので御座るか?また子殿」
「晋助様が飼って良いって言ってくれた猫ッスよ!? もちろん、名前は晋助に決まってるじゃないですか!」
「それとこれとはどういう関係が?」
アタシは、男に掴みだされた真をじっと見た。
「晋助様の名前なんだから、ちゃんとしたのじゃないと!やっぱ晋助様の名前はローマ字になってもカッコ良いッス!」
「という事でござる、」
「え、」
行き成り話しをこちらに振られた。
「これは、返してもらうで御座るよ」
「あ、あと、」
「あん? もともとの飼い主は私なんだから、返してもらうッス!」
「あと、3日だけ、で、、、良いんで…ちゃんと3日後返すんで、」
一生懸命お願いしたら、女の子が、快諾してくれた。
じゃぁ、3日後のこの時間にここで待つッス、と言って保障までに電話番号といわれ
アタシは、ケータイなんか持って無いから、副長の携帯番号を教えた。
「これ、アタシの番号じゃないけど、アタシの名前言えば、アタシに代わってくれるから」
「アンタ、名前は?」
「、」
「?」
「はい、そうですけど、、、」
「どうしたんすか? 万斎先輩」
「いや、聞き違いかと」
意味が分からず、アタシは男の人の腕から真を奪い、
それじゃぁ、と一応言い残しておいてその場を去った。
「何なんすか? 先輩。 ついに万斎先輩もロリコンに目覚めたんッスか?」
「そういえば、真選組にと言う女隊士が居ると聞いてな、、、」
「だとしても、あんな奴な訳無いじゃないッスか。 うちらの顔見ても、全然攘夷浪士だって気付いて無いし」
「、、、そうでござるな。 それよりも、猫、良いので御座るか?」
「ま、返してもらうんなら良いんスよ。 しかも今日の占いで、寛大になれ、って言ってたし」
「また子殿は占いを信じるんで御座るな、いやはや、乙女らしい」
「乙女ですけど、」
「メス豚の間違いで御座ろう。」
数分後、銃声が聞こえたが、アタシは足を止めずに万事屋へ向かった。