「銀ちゃん、銀ちゃん!」
行き成り、玄関先からの叫び声が聞こえるもんだから、すっ飛んだ。
っつーか、前にもあったぞ、こんなシーン。
「どーした!」
「銀ちゃん、またそんな格好してる」
「お前が来るとき、いっつも俺が○んこしてる時だからだろ! っつーか、濡れてんな、服。」
「雨降って、万事屋にきたら、銀ちゃん○んこしてた。ないすたいみんぐ、じゃんっ!」
「違うぞ、断じて違う!っつーか、もうそんな事言うな!ごめんね!俺が言わせたんだ!ごめんな!」
俺は、冷静になり、注意される前にズボンを履いた。
「じつは、かくかくしかじかで、、、」
「ネコの持ち主ねェ。 っつーか、ネコ飼ってたのか。」
「うん、屯所で走り回ってたから、、、そのまま飼う事にしたんだけど、」
「返すしかないな、それじゃぁ、」
「そしたら、独りになっちゃうもん!」
「一人?」
俺はそれは可笑しいだろう、と思った。
お前の傍には、副長がいるじゃねぇか。
しっかり、この前、の口から、「好き」って伝えただろう?
詳しく聞いたら、女中が副長の周りをうろうろしているらしい。
それを見るたびに、前よりも酷く胸が痛む、そう悲しそうに言った。
「俺だったら、そんな事しねぇのにな、」
「え?」
目の前のは、俺が買った苺マシュマロを口に頬張りながら、おどけた表情でコッチを見た。
俺は、何でもねぇと言い返し、の胸元から首を出すネコに眼をやった。
真っ白な、ネコはの心みたいに、綺麗な色をしている。
「そういえば、これ、銀ちゃんに似てない?」
「は?」
俺は驚き、身を乗り出してしまった。
じろじろと、ネコを見つめていたら、ネコの手が服の中から伸びて引っ掻かれた。
「いって!」
「照れてるんだよ、銀ちゃんに似てるから」
「似てねぇよ!」
「だって、色白い。 銀ちゃんの髪と同じだよ。くるくるしてないけど、可愛いじゃん」
「んー、」
白いのを何でも俺に例えるなら、あのでかい定春だって、俺になっちまうだろ、
と、苦笑しながら返事したら、思いもよらぬ返事が来た。
「でかいのは、心がでかいから、銀ちゃんの」
「まぁな、」
何で、お前は綺麗な事を、恥ずかしいことを、人が言われて嬉しい事を、
さらっと、言えるんだろう。
大串君は、コイツの何が不満なんだ。
純粋で、人を確りと見て、尚且つどこか抜けてるが、頭が良い。
「さーて、早く帰れよ?」
の傍に置かれたバスタオルを取り上げ、そう告げた。
じゃないと、心配するだろう、アイツが。
「じゃぁ、銀ちゃんが屯所まで送ってくれたら良いよ!」
「甘えんな、ガソリン無いんだよバカ」
「じゃぁ、一緒に歩いてく!」
「、、、しょーがねぇなァ、まってくもう〜」
いやいや言ってる割には、きっと俺の顔は綻んで笑っているだろう。
「なー、。」
「なにー」
マシュマロの袋(2袋目)を片手に、嬉しそうに前を歩くに話しかけた。
「人ってのはよ、誰かのものにはなれねぇんだ。」
「、、、へ?」
立ち止まり、振り返る。歩は止まった。
の片方の頬は膨れてる。大方、いっぱいマシュマロを詰め込んでいるのだろう。
返事だって、柔らかい声してた。というか、モゴモゴ言ってる。
「だからよ、人ってのは誰かのものにはなれねぇんだ。」
「でも、副長は傍にいてくれるよ、ずっと」
「確信はねぇ。絶対はねぇだろ?」
「絶対だよ」
「、、、」
「小さい頃、覚えてる、言ってくれた、副長」
「そっか、」
じゃぁ、何でお前を裏切るような行為をするのだろうか。
俺は、それが理解できなくて、解せなくて、一発、否、百発殴りたい気分になった。勿論大串君を。
「じゃぁ、信じるか、副長を、」
「うんっ。それにね、アタシ今独りじゃ無いもん。 今気付いた。」
「は?」
ネコが居なくなるってのに、独りじゃないって、
「だって、銀ちゃん居るもん。」
「そーだな。 俺ァ、お前の傍にずっと居るか。さしずめ、お前がネコで、俺が飼い主」
「うんっ。 毎日、甘い物期待してます」
深深と頭を律儀に下げる。
ネコの頭が落ちないか、心配した。
「流石に毎日は来ないだろ? ほら、行くぞー。 じゃねぇと、夕方になっちまう。」
「うん。」
お前は、「誰かが傍にいてくれるだけで、気強くなれる。」
そんな不可能に近い可能を、証明した。
「〜。」
「なーにー。」
目の前で大らかに歩くは、頭の上に猫を乗せようと頑張っていた。
「銀さん、お前の事好きだぞー」
「もー。 だーいすき。」
振り返り見えた笑顔は、絶世の美女。