世の中には、案外厳しいルールの下に例外と言うものが潜んで居たりする。
いつかの真選組も、そうだった。





甘い物、というかマシュマロが大好き。
悪戯も大好き。
普段遊んでばっかり。
だが、誰か【総悟】が働かないと、きっちりその分まで働く。



女の癖して、部屋汚い。
化粧が絶望的に下手、
私服は、俺等のお下がりで女気の欠片一つも無い。
皆無だ。



いつしかの真選組には、
女が居た。








一人だけ、一時期だけ。






名を、 
コイツが小さい頃、近藤さんが拾ってきたもの。
一人でフラフラしてるのを、何日も見かけた為、拾ってきたらしい。
一時期、ロリコン疑惑が浮かんだが、そこには触れておかないで置こう。
コイツは、誰譲りなのか頑固な奴で、
俺等と一緒に上京すると、言いだし、それを、近藤さんが承諾して、
秘密裏にソイツは、此処に居た。
俺は猛反対だったが、当時既に局長に就任していた近藤さんの意見は絶対だ。
誰が何を言おうと、誰も【俺以外は】反対・反論しなかった。



そして、は晴れて副長 助勤というポジションに就いた。








名を、
五感、六感が、優れていて女にしては勿体無かった。
何時まで経っても発達せずに、時におかしな言葉をしゃべる。




「今回は、しょうがないでス。」
「何で語尾が上がるんだ、可笑しいだろ」
「しょうがないですヨ、」
「、、、はぁ、」
「諦めなせぇ、のボキャブラリーは増えませんって」





剣の腕は立つ。
が、五感・六感が余りにも優れているため、
人混みや見回り1時間後には倒れて山崎が街の何処からか探して屯所まで持って帰ってくるか、
知らぬ間に何処かの病院に運ばれていることがしばしば、というか毎回そうだった。



何時しか俺は、ソイツに外出禁止令をだす。
それ以来、倒れる事は無いし、俺の【ある意味での】ストレスは無くなった。
当の本人は、やれ刀の見せ場が無い、やれ社会勉強したい、等と不平不満を愚痴るため
外出時に必ず俺が着く事を義務付けたら、マヨネーズ男めが!、と誉められた。






「守備は、」
「はいっ。 双方此方の存在に気付いて居ません!」
「山崎が居るとね、誰にも気付かれないの、スゴイよ。 これね、迷信1号。」
「ねぇ、サン。それ俺の事
「地味って言ってんのが分からねぇのかィ、山崎?」
「、、、お前等、緊張感を持て、」
「始めてのお仕事だもん! 感動するよね!」
、、、それを言うなら、興奮だろぃ?」
「興奮すんのはお前だけだろ、」
「あれ? 土方さん自棄に落ち着いてますねィ」
「近藤さんが居ねぇんだ、俺がしっかりしてなきゃ
「副長、言ってる傍からサンが脱走してます」
「くぉらぁああああ!!っ!」
「ましまろかってくる!」
「マシュマロな! マシュマロ! って、おい! 待て!」




此処にあるから!と言うと、直ぐに戻ってくる。
早速遠慮も無く袋をバリバリと開けて、白いマシュマロを口に放り込む。




「いい加減覚えろよ、ましまろ じゃなくて マシュマロ だろ?」
「ろれるまわららい」
「何て言ってんだ?」
「呂律回らないそうですよ、」




俺はその発言に何故かイラッときて、傍に居た山崎を思いっきり叩きのめした。




「何遍言ってんだ、俺ァ。 ましまろ は マシュマロ。
 口に物を入れたまま喋るな。 バリバリ袋空けるな。 緊張感を持て!」
「始めてのお仕事だもんー。 久しぶりの外だもん。」
「あーあ、ほら、土方さんの後ろに、、、もうだめでさァ、、、」
「なに? おおっ!ありゅりょ!」
「何だ、その奇声は」
「副長!副賞!」
「副長な、副長、っつか、何だよお前等揃いも揃って、、、
 後ろにお化けが居るなんてジョークにひっかからねぇから、その顔やめr、、、」




ズガコン!と、傍にあった大きなコンテナから音がした。
振り返れば、俺等の存在が気付かれていた。
振り返って3人【山崎、、総悟】を確認したら、既に隠れている。



コレで
「山崎が居ればどんな任務でも敵に気付かれない」
という真選組迷信1号【総悟とが作ったくだらない物】は消えた。


これが俺らの普通、だった。



























どちらかと言えば、運が良いほうだった。
何の加護だか知らんが、どんな任務も順調にこなせていた筈だった。

近藤さんは、がちゃんと良く仕事をして調査してくれるおかげだと言い張った。
俺も、そうだな、と思った。
屯所も出ずに、ほぼ調査して来る張本人は山崎な訳だが、それも全ての命令があってこその結果だ。





「西の東、二つに分かれてるんですよー、今回」




今回の敵は、頭良く2手に分かれているらしく、、、




「って、早く言え、そう言う大事な事は。 そんなら真ん中に居る俺等は囲まれてんじゃねぇか。」




おおー、そうですね!とがのんきに返事をした。
どこかのデカイ料亭。
西館、東館と分かれているこの料亭のど真ん中に位置する中庭に俺等は居た。
どんちゃん騒いでいるのか、それとも何処かの一室に隠れて会議を催しているのか、客の慌てる姿は見受けられなかった。
裏口は既に二番隊塞いである。




「聞くところによると、西館に首領が潜んでいるらしく、此方の存在には気付いて居ません」
「何でそう言う事が分かるんでぃ」
「だって、監視カメラあるでショ? モニター室って所に他の隊士置いてて、無線で交信してんの、」
「そうサンが言ってくれました」
「何だ、俺ァてっきり山崎が急に天才になったのかと思いやした」
「無理無理、山崎は山崎のままだよ」
「ひどく無いですか? 皆さん」




俺の判断で、俺・総悟は西館。
近藤さん・・山崎は、東館の偶然居合わせているはずの別党である攘夷浪士の取り締まりを担当した。




「副長助勤の意味無いじゃ無いですか!」
「しょうがねぇだろ! 西館には首領が居んだ。危ねぇだろ。 お前は東館の攘夷浪士の取締りしてろ。」
「トシ、俺、局長だから西館に行ったほうが良いと思うんだけd
「よーし、じゃぁ解散でさァ! 連絡は無線で取り合うこと。 一般市民に傷付けんじゃねぇぞィ」
「無視? 総悟、俺の事無視?」
「さぁて、まぁもう号令ゆっちゃったし、局長行きましょーよー」
「号令? 最近の真選組は号令で作戦開始してたの!?」
「局長、煩いですよ、」
「山崎地味だから先に行ってよ。」
「え!?」




が、回れ右をして東館へ入るとき、俺はきちんと呼びとめた。




「おいっ!」
「ほい?」
「気を付けろよ!」
「もちろんでス!」
「じゃぁな」
「副長もガンバー!」
「あぁ、(緊張感持てって何時も言ってるのに、」







何時ものように、今回もきっと楽では無いだろうけれど、直ぐに終わると思っていた。
過信しすぎていたのだ。










「土方さん、」
「んだよ?」




首領を捕まえ後は隊士に任せて、中庭で東館に行った近藤さん達を待っている時だった。




「今さっきから、と全然交信が繋がんないんでさぁ。
「・・・?モニター室ってのには繋がんのか? 其処での安否ぐらいかくにん
「其処も無理らしくてねィ。 辛うじて自分達と一緒に付いて来た隊士達と交信できるぐらいで、




そう総悟が言い終わる前に俺は、東館へ続く廊下を走った。
確か、丁度真ん中の階に別党の攘夷浪士達は居るはずだ。


今日は、大量に攘夷浪士たちを殲滅できると思ってた。
首領のいる、大きな攘夷党が西館で。
小さな会合をただ開いている別の攘夷浪士たち。









後々に知った。
積極的にモニター室の監視を求めた隊士の半分は、スパイというか、密偵者。
勘の良いアイツでも、当てられなかった事だから、仕方が無い。





「首領は俺らのところの西館じゃねぇのか!?」




走りながら、後ろをついてくる総悟に話しかけた。




「俺ァ、からそう聞いてやしたぜ!」
「ちょっとまて、同じ攘夷党が別の館に居るのは可笑しいよな」
「普通に考えてそうですねィ」
「ッてことは、アイツ、」




また、足らずな日本語だったってわけか!




「また、いつものアレじゃないですかィ? の足らず日本語。」
「困るな、おい総悟、今度に日本語教えてやれ」
「嫌でさァ。せいぜいアンタが教えるんだね」
「・・・」






廊下の先から、ぶっ飛ばされた近藤さんがすごい音を立てて、襖を倒し飛び出していた。
肩腕を押さえ込みながら此方に気付いた。
後に、1つの刀が腹に刺さった山崎が飛んでくる。
わき腹に綺麗な日本刀刺しやがって。あれで死んだら地獄まで追い回してやらぁ。







「トシっ!」
「んだよ、近藤さん!」
「近藤さん、気付きやしたか?」
「あぁ、・・・は生理中だった・・・」
「そういうことじゃねぇよ!」
「じゃぁ、なんだ。何時もと違うぞ・・・?」
「それは置いといて、同じ攘夷党が別館に居るのは可笑しいってこと」
「あぁ、知っていた・・・それは知ってた・・・」
「じゃぁ、何で教えてくれなかったんだよ!?」
「トシ達は知っているのかと・・・」
「知らねぇよ・・・」
「それよりも、トシ、総悟、聞いてくれ、」




聞く耳も持たず、俺は一歩、一歩、廊下を歩いてぶっ飛ばされて露わになった部屋を見た。






見えた光景は、数名死んでいる、幕吏達。
近藤さんとが連れて行った隊士たち。































もっと奥にいるのは、倒れた
の心臓を足で踏み不気味に笑う、高杉晋助。











状況を、整理させてくれ。

何で、倒れた幕吏がいるんだ。
此処に居るのは、攘夷浪士だろう?
俺らがてっきり、同じ攘夷党だと思い込んでいた、
本来なら別の攘夷浪士たちだろう?
誰がに誤報を報告した?
新しく入った監察か?
スパイ?密偵?恨みを持った人間?


後から来た総悟は、殺気を放ちながら、冷静に言った。




「誤報を流したって訳ですかィ・・・。
 此処に西館に居た攘夷党の残りが居ると。
 全然攘夷じゃねぇですぜィ?幕吏が死んでらァ。
 差し詰め、俺らは鬼兵隊が潰す所を止めると・・・」




近藤さんの持って入った隊士達じゃぁ、腕は立たない。
隊長格の、それこそ俺や総悟、近藤さんが居てやっと傷がつくぐらいの鬼兵隊。




「当たりだなぁ。頭の良い犬。」
「テメェは黙りあがれ!その足をどけろ!」
「俺ァ、頭の良いことをしようと考えたらな、良い鬼兵隊の部下が居てよォ。
 ソイツが元・真選組だって言うもんだ。
 この女、策士なんだろう?ソイツに誤報を流す。
 テメェ等は構わず首領が居るはずの西館に行き、
 簡単な浪士たちの居るはずな東館は女・ゴリラに任せると読めてた。」
「黙れ・・・」
「此処まで上手くいくとはなァ?」
「・・・黙れ、黙れ、だまれ」
「幕吏と真選組の半分を一気に潰せると考えたが・・・、やっぱダメだなァ?
 女の連れてきた隊士は全部弱いやつばかりだ。真選組の強い奴がまだ潰せてねェ。
 まぁ、其処に居るゴリラの肩は潰してやったがなァ?」




総悟が逸早く動いた。
高杉晋助は力強くの心臓を踏み台に逃げた。
の口から微量の血が吐き出された。





「総悟、そのまま追え!」






























一歩、一歩、の倒れている場所へ向かう。


幾千の死体と血臭い場所。
お前が一番嫌う場所だろう?
何で倒れてんだよ。












?」
「ふく、ちょ」
「副長だろ?」




傍に座って、タバコを吹かした。




「いた、い」
「当たり前だろう。ちょっと待ってろ、今隊士達呼んでくるから
「いら、ない。きょくちょ、だいじょぶ?やまざき、と、ばさ、れた」




少しずつ、少しずつ喋るは、人の心配ばかり。
お前の心配をしろよ。













抱き上げた身体は、何時も以上に重い。
隊服から滲み出る血の感触が、手に当たる。
ベトベトしてる。お前の好きな隊服、こんなになっちまったら、新しいの新調しなきゃな。












「死んじゃう、」
「死なせねぇよ」




幼稚な行動だとは百も承知だが、傷口をとめようとした。





二つの手では、到底足りないぐらいの傷口。
止め処なく溢れる血は、の代わりに涙を流しているかのように、あふれ出す。






「副長助勤は何時も副長の隣に居なきゃいけねぇんだろ?」











そう、いつかのお前が誇らしく、俺に言ったんだろう?
いつでも一緒だって。
たとえ俺が急ぎ足で歩いても、お前は追い越すぐらいの速度で追いかけてくるんだろう?
そう、言ったんだろう?
いつか、晴れた日に、誇らしく、胸を張って、言ったの、まだ覚えてるよな?

















『副長助勤っていっつも一緒にいるんですヨ!局長が言ってました!
だから、アタシ、いつでも副長の傍にいるんですヨ!忘れないでくださいね!
置いて帰ったら銀ちゃんのところに行って、甘いもの食べて天然パーマになってきますヨ!』
『心配しなくても、甘いもん食っても天パにはならねぇよ。』










「トシはだいじょぶだよ、ひとり、だいじょぶ」




久しぶりに聞いた、お前が[トシ]と発する声。
こんなときに、聞きたいんじゃないんだ。
何時も、何気ないときに、聞きたいんだよ。
お前が俺の名前を呼ぶたびに、俺が俺で居られるってのに。
何時からか、普段から副長って呼ぶようになったよな。




「ひとり、だいじょぶです」




何を根拠に言う?
何を根拠に一人で大丈夫だと、拙い口で言う?








なぁ、答えろよ。




「副長ってのはなぁ、一人じゃいけねぇんだよ。
 マシュマロが大好きで、甘いもんが人一倍大好きで、バカでいとおしいお前がいなきゃ成り立たねぇんだよ」










は徐に血だらけの手を動かす。






























「としぃ」













切ない声で













「だいすきだよっ」













残酷を告げる。













「ずっと、いっしょに、いたかったよ、っ」













お前が、笑ったときも、傍にいるのは、副長の俺だ。
お前が、泣いたときも、傍にいるのは、副長の俺だ。




なぁ、違うか?













新しい感情を知ったときも、
怒られたときも、
嬉しいときも、
何があっても、



傍にいるのは、俺だろう?















「うぁ、ゎあ、ぁ、っ」





不器用に泣くの頬を、の血だらけの手がするように撫でた。











「とし、ぃ」





「なんだよ」




涙がこぼれそうな目を、確りと開けた。
かすかに笑う、その顔は絶世の美人。
俺が認めた、一番の人。


























ふくちょ、あいしてる























せかいで、いちばん。























あいしてるよ。























ずっと、ずっと、あいしてますヨ、トシ。





















『副長!』
『んだよ、忙しいってのに。』
『じゃぁ、良いです!』
『何なんだ、気になるだろ。言え。』
『コレは、銀ちゃんが大事なときにしか綺麗な言葉は言っちゃいけないって言ってたから言わないです。』
『あそ。(っつか、言ってること意味不明だし。日本語なってねぇよ、』
『大事なときに言います。』
『んじゃぁ、そん時まで待ってるわ。』
『はいっ!』






















「もっと、大きい声で言えよ。」










今が、その大事なときじゃねぇのかよ。
















呂律が回らないと、はぐらかしても良い。










いつものように、二言目にマシュマロが来ても良いから。










もう1回、聞かせてくれ。




その綺麗な声で言う、俺の名前。















その綺麗な声で言う、穢れなき、綺麗な言葉。








 あ い し て ま す



















「聞こえねぇよっ」











頬から落ちた手を握り締めた。



その手は血に染まっていた。










始まりへ向かう、



終わりの話。



真っ直ぐに、仰いだら。




















































長いわねぇ、コレ←何
2011/09/20
真っ直ぐに仰いだら という名前の 真選組 助勤 連載の元ネタ。
始めて小説を読んでくれた人に、このヒロインの生前の話が読みたい!と言われたので
連載になった、という感じです。

その内復活するよ、この連載。



知る人のみぞ知る、駿也の初連載物。