隣に座った晋助の煙管の匂いが、鼻を擽った。紫煙を此方に向けまいと、配慮をして居るらしいが どうしても、風の所為で、紫煙がこっちに、流れてくる。 隣に座ったアタシは、その煙に咽返すことなく、ただ平然と座っていた。 「てめぇは、何が為に此処に居る。 何が為に、剣を握り、戦うんだよ」 「・・・理由を聞いてんの?」 「そういう風に、聞こえなかったか?」 「・・・別に、理由は無いよ。」 「憎悪か」 「・・・晋助だって、そうなんでしょ?」 「俺ァ、違ェな、残念ながら」 「嘘付け」 「悪い事ァ、言わねぇ。 戦が終わるまで行きぬいて、後は自由に 女らしく、暮らすこったな。 俺から見ても、お前、嫌々で戦争に参加してっだろ。 そんなんは、命取りだ。」 「・・・でもさ、指図されて、従うほど、利口な女じゃないよ?」 「ふざけんなよテメェ、指図だァ? そんなんじゃねぇよ。 これァなァ、鬼兵隊隊長の命令だ。」 「・・・」 「規則を言えや、鬼兵隊副次官さんよォ」 「1、敵と内通せし者、切腹。 2、隊長命令厳守。 3、 「2番目は、何だ」 「隊長命令厳守」 「じゃぁ、守れ。 死ぬなよ、」 「それも、命令?」 「そういう風に、聞こえなかったか? 一々確認させるな、面倒くせェ」 「うん。」 生き延びれば良いんだ。 その後は、晋助の言われた通り、女らしく生きれば良い。 もし、それが晋助の望む事だったら、何だってする。 何だってやれる。 だって、愛おしい貴方の命令だもの。 でも、その女らしく生きると言う未来の中に、 貴方の作ったレールの上で死ぬまで走るアタシの横に、晋助は居るの? ダイスキな貴方は、何時ものように横に座って居るの? 晋助の居ないアタシ未来が、 目の前において在るレールだったら、 晋助の居ないアタシの未来が、 晋助の用意してくれたレールだったら、 そんなんだったら、蹴散らしてやる。 そんなんだったら、駅のホームから、飛び降りてやる。 |