「怖いんでさァ」 「此の侭、寝たら。 もう、二度と、この眼が開かないような気がして。」 「怖いのは、こっちだよ」 「もう、二度と、一緒に居れないって思うと」 「写真、撮りたいな。」 「冗談。 止めてくだせェ」 「何で?」 「写真を撮って、如何するんでィ?」 「せめてもの、思い出」 「思い出なら、此処に在れば、良いじゃないですかィ」 「そう、だよね。 (足りないよ、総悟)」 「そうでさァ。 (久しぶりに見る、悲しい顔、だ。)」 「総悟がいないと、つまらないから。」 「ああ、」 「早く、元気になってね」 「勿論でさァ。 俺には、まだやらなきゃいけないこと、沢山あるんでねィ」 「明日も来るよ」 「こなくて、良いでさァ」 「どうして? (そんなことを言うの?」 「移したら、怖いんでねィ」 「アンタにゃァ、俺と同じ道を逝って欲しく無いんでさァ」 「・・・そんな事、無いよ」 「どんな時だって、ずっと側に居なきゃ」 「・・・」 「アタシは、総悟と言う名の光をなくしちゃうじゃない?」 「ははっ」 「え、今のそんなに笑えた?」 「よくもまァ、恥ずかしがらず、言えるもんですねィ」 「あはは」 「あ、ねぇ、総悟? 最期に、聞いて良い?」 「何でぃ?」 「・・・総悟は、自分を動物に例えると、何?」 「猫、でさァ。 しかも、まっくろな、黒猫」 「・・・ヘンなの」 「あーあ、分かりやしたから。 帰りなせェ。 遅くなると、土方さんが、心配すらァ」 「うん、ばいばい。」 「バイバイ、」 「知ってやしたかィ? 黒猫は、不吉なんでさァ。」 「それと、猫は人目知らずの場所で、死ぬんですぜィ?」 「現に、ほら。 俺ァ、此処で、一人、死ぬんでさァ」 [ああ、最期の声が、君に届かない。] 逝ってしまった、愛おしい君。 090409 |