新しく、俺の小姓として入ってきた隊士。 其れは、女だった。  無愛想な面構え、凛と光る目はまるで猫の様。  仕事の呑む込みは速く、出来た頭だった。  それでも、何時になっても馴染まない。  隊士が話し掛けても、必要最低限は喋らない奴だった。














「副長、失礼します」
「入れ」









定時の報告書。 その紙は、密偵の山崎から俺宛の報告書だった。  それに、眼を通し「読んだ」という印の署名をする。  俺は、その署名し終わった報告書を、目の前の無愛想な女に渡し、猫みたいな凛と光る目を、見据えた。



即座に立ち去ろうとするソイツを、俺は引き止めた。









「行くな」
「何でしょうか?」











俺は紫煙を吐き、1つ間を空けて、立ち上がったアイツを見上げながら言った。



























「俺ァ、お前が嫌いだ」
「御結構です。」
「隊士とも、喋らねぇ」
「そうです」
「オマケに、無愛想」
「・・・何が言いたいんですか? 土方副長」









ソイツは、俺を見るようにして、顔をコッチへ向けた。 座りなおし、報告書を傍に置く。













「俺は、テメェが嫌いだ」
「結構です」
「・・・」
「例え好かれたとしましょう、それでは困ります。
 だって、好かれては、
 土方副長は、アタシに何でも
 言い付けられないじゃないですか」
「・・・」
「嫌われて、それで結構。
 好いてるから、女だからと、見下され
 小姓に何も言わず、本来の任務が出来なかったら、
 それこそ真選組は、崩れ落ちます」
「・・・一理在るな」
「嫌いなままで居てください」
「はっ」
「何が可笑しいんです?」
「真選組の嫌われ者は俺だけかと思ってたが、
 此処にも居るのか。 胆の据わった、小姓が」
「土方副長が創り上げたこの玩具を、簡単に壊されては
 目覚めも悪いでしょうし」
「・・・玩具ねェ?」
「実際、そうですよね? 副長」
「・・・違ェ、ねぇな」













嫌い、嫌い、其れで丁度善い。





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