多分ココは、最上階。

今まであたしが居た場所は、一番上の部屋だったと思う。
アタシは、バレ無い様に、こそこそしながらエレベーターに乗った。
このまま下に行って、逃げれば良い。
懐に入れた地図は、隠しながら。これを持てば、何処にでもいける。
地図には、万事屋銀ちゃんの名前と、丁寧に松山の研究所の場所まで書いてある。
真選組屯所、ターミナル、今まで捕まってた場所、かぶき町。
髪が長いから、直ぐにバレる。 外に出たら、適当な場所で、髪を切って。
そしたら、松山の研究所行って、隠してた書類を全部持っていく。
んで、銀ちゃんの家いって。 一緒に暮らすんだ。





死んだ





それでも、土方から聞くからには、銀ちゃんと土方は、お互い知りあってるっぽい。
時々、土方と会話の中に、出てくるし。
まぁ、お互い嫌い合ってるらしいけれど。


エレベーターの機械音が、一番下に着いたたと告げた。
あたしは、俯いてた顔を上げて、エレベーターを出た。
出た後、後ろに感じた気配は、松平と土方。

何で、逃げてるあたしを、捕まえないんだろう。
アタシは、構わずに出口から外に出た。






眩しい光が、あたしの影を作る。


土「・・・着替えてやがるな、アイツ」
松「そのままの姿で出たら、流石に見つかりやすいだろう。
そんなアホするようなバカじゃ、あるまい」

土「・・・・」








攘夷戦争以来。 アタシは、まともに外の状況を知らないで居る。
松山に捕まってた頃も、外に出れなかったし、勿論、今さっきまで幕府に捕まってたときも。
外は変わった。

天人と人間が、共存してる。

仲良しには、見えがたいが。
昔とは、段違いだ。
刀を掲げた、侍は一人も居ない。
唯一、商人やらが、健在だ。 あとは、皆、変わった。

ヘンな店も増えてるし、ヘンな輩も増えてる。

アタシは、すぐさま裏路地に繋ぐ道端で、ゴミ置き場を見つけた。
今さっき、幕臣(見回りの奴)から奪った刀を出した。

髪を切るには大きすぎるな・・・でも、今はこれしかない。
お金は持ってないから、ハサミも買えない。



アタシは、腰まで伸びてた髪を自分の手で握って、ソレに沿って、切った。
肩より上まで切れば、十分男っぽく見えると思う。
第一、アタシには胸が無いし。 まぁ、男装時には、便利なんだけれども。
アタシは、切り落ちた髪を見た。
小さい頃、真っ黒な髪だけが、唯一人間らしかった。目は、赤茶色。 肌は、人一倍白い。
今じゃぁ、その身体のあちこちに、刀の痕やら、メス痕やら、色んな傷が出来た。



頭を一振りして、髪を整えた。 多分、これで早々バレ無いと思う。
名前も、変えよう。 変えなきゃ、フルネーム名乗ったときに、きっとバレる。
土方から聞けば、 014 と言う名とアタシの名は、天人と幕府の間で有名らしい。
最終実験体な訳だし、昔松山から聞いたけど、今までの実験結果がアタシの実験内容らしい。
だから、アタシの体は、今までの松山の実験内容が全部ある。

刀を仕舞った後、アタシは懐の地図を出した。
ココから、松山の研究所まで、結構近い。 裏路地を使えば、分かりやすいかもしれない。
それと、あの季節外れに咲く紅桜。 あれが、目印だ。
松山は、殺されたと聞くし、多分今、其処には誰も居ないはず。


そのまま進んで、裏路地へ行く。 野良猫が、鳴いてた。
感じるからには、背後には子供が遊んでる。
小さい頃のアノ裏路地みたいだった。 アタシ達が、住んでたような、アノ裏路地。

早く行こう。 急がなくちゃ。
何か、嫌な予感がする。


嫌な感じ。
この直感は、当然実験結果なんだけれども。
今までの経験で、当たってる確率は高い。

松山の研究所までの道のりを、あたしは地図を持って、急いだ。




何故か分からないけれど、体が勝手に、その場所へと急がせる。


急がなきゃダメなんだ。










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