を、見失うのは、これが初めてだった。
死んだ魚
着いた先の戦場は、アタシが見た中で、一番最悪だった。
幕府の旗。
天人が作り出したであろう、火薬の匂い。
血の匂い。
叫び声。
攘夷党壊滅寸前。
「・・・・幕府・・・・だ」
銀「・・・・うろたえてんじゃねぇ」
ヅ「・・・・予想が当たったか・・・」
高「・・・俺は、鬼兵隊を連れて、西と北に行く」
ヅ「俺は情報収集と、介護に当たる。 銀時、、南は他に任せて、東へ行け」
「・・・アタシ、西行きたい」
銀「言ってる場合かよ!」
「だって、西の方が強いし」
高「お子様に任せてられるか、ボケェ」
「んだとッ!!!!」
銀「・・・・やめろ、下らない喧嘩で戦力を無駄にすんな」
高「・・・・チッ」
「・・・・晋が行くんだから、負けんなよ!」
高「当たり前だろ? 鬼兵隊をナメんな、クソ餓鬼」
「行ってらっしゃい」
銀「・・・」
高「・・・あぁ」
晋助の笑った顔が、是で最後じゃないように。
先に、軍を率いて行った晋助の背後を見つめた。
是が、最後じゃないように。
また、晋助が意地悪そうな顔で笑った顔が見れるように。
祈りながら、背後を見送った。
ヅ「・・・。 血止め薬は持ったか?」
「持ってる」
銀「・・・ハンカチとティッシュは?」
「持ってない」
銀「帰れ」
「遠足じゃないんだし」
ヅ「・・・気をつけろよ、2人とも」
銀「・・・辛気臭い面すんな、ヅラ」
「・・・ヅラも、気を付けてね。
白い生命物体だからって、無闇に近寄っちゃ駄目だよ!」
ヅ「ヅラじゃない! 桂だ!!!!」
ヅラが、そう言った。 その口癖が、最後じゃないように。
皆の笑顔が、是で最後じゃないように。
また、何時もの場所で、何時ものように笑っていられるように。
そう、皆の無事を祈りながら、アタシ達は、それぞれの途を、駆けた。
戦って。 戦って。 斬って。 斬られて。
血を出して。 血を出させて。
それでも、幕府に叶うことは無かった。
持って行った志士は、今や皆無に近いほど居ない。
後ろに居るのは、白夜叉に成り果てた、銀。
一瞬、返り血を顔一杯に浴びた。
相手は、人間の、幕臣の血。
急な事で、目を逸らしてしまった上に、背中を向けた。
そりゃぁ、誰だって、顔に何かが掛かれば、顔を拭きたくなる。
それが、甘かったらしい。
銀は、銀の目の前に居る敵を斬る事に夢中だし。
それに、銀だって、時々我を忘れて、この前のアタシのように
人を斬って行く。
___________________________ザシュッ
途端にしたのは、焼けるように痛い、背中。
皮膚が裂けたような痛み。
血の出る感触。
「・・・・・・ッ!」
怖くなった。 怖かった。 何時も以上に、感じる痛み。
後ろを振り返って、銀を確認しようと想ったら。
銀時も、其処には居なかった。
残ってる攘夷志士は、アタシだけだった。
「銀?」
返事が無い。
「銀時?」
返事は、無い。
アタシはただ、込み上げた血を地面に吐いて、成す術も無く倒れた。
天人と幕臣が、見下すようにアタシを見て、あざ笑う。
「・・・・ッ!」
もっと、強ければ。 もし、銀時が背後に居れば。
お前等なんか、一網打尽にしてるのに。
何で、銀時が居ないだけで、こんなにアタシは弱いんだろう。
「死ぬのには、勿体無いな。 こいつ、俺が貰う」
その声だけが、異様に響き渡り。
アタシは、意識を手放した。