全身に走る痛みの所為で、悪い目覚め方をした。
死んだ魚
目を開けたら、自分の刀がまず先に目に入った。
起き上がった途端に、激痛が体をめぐり、その場で倒れた。
血は止まってるらしい。
だけど、動くたびに痛みが走り、想うように体が動かない。
それに、昨日出来た傷も、開いてるに違いない。
「おっ、起きたか?」
「・・・誰?」
声元をたどり、振り返ったら、男が其処に立ってた。
腰元には、刀。
胸元には、幕府の家紋のついた羽織。
「松山と言う。」
「・・・知らんな、そんな奴。何用だ!」
「黒い髪だから、分からんかったが、お前天人だろう?」
「・・・・・」
「目の色は、誤魔化せまい」
「・・・だったら何だ」
「・・・此の侭、幕府に首を切られるか、それとも俺の実験台になるかだ」
「・・・・はっ?」
「随分昔にな、2つの実験体、013と014に逃げられてな。天人と人間のハーフだったんだ。」
「・・・」
「・・・戦場なら、幾らでも材料があると想ってな。
そうさまよってた矢先にお前が死に際でわないか」
「・・・ご免被る」
「つれねぇなぁ?」
「・・・・」
手を伸ばせば、すぐに自分の刀が手に取れる。
薄暗い部屋には、ドアから差し込む光しか無い。
今更ながらに、自分の目の色を嫌った。
天人と人間のハーフながらにして、目の色は黒と違い。
銀に至っては、髪の毛の色まで違う。
肌が凡人よりも、白いのは当たり前。
体が丈夫なのも、天人と人間とのハーフだからに違いない。
ドンッという、思い切った音が、ドア先でした。
目を向けてみると、一匹の天人が、銀の羽織を引きずって、銀を持ってきた。
「・・・・(銀時・・・?)」
「・・・おっ、よく探してきたな」
「噂の白夜叉です。 抵抗せずに、簡単に捕まりましたよ」
「・・・(抵抗せずに? 何か可笑しい。)」
「・・・・天人らしいな、白夜叉の方が。 髪の毛の色も、目の色も」
「松山先生は…あの女ですか?」
「・・・まぁな。 目の色が、ソレらしくて、もって帰ってきたが…」
「・・・丸っきり、ただの女ですね」
「・・・・・」
まただ。 あざ笑うようにして、攘夷志士を見下す、幕府の人間と天人。
アタシは、睨み返すようにして、相手を見た。
松「女、帰ってよい」
「・・・アタシが帰るんだったら、其処に居る白夜叉も」
「ソレはならん。」
「何でだ!」
松「お前が使えないから、この白夜叉が実験台になってもらう。」
「・・・はっ?」
「お前が帰る代わりに、白夜叉が実験台になるんだ」
松「…白夜叉に感謝する事だな。 コイツノおかげで、お前は死なずに済むんだ。」
アタシが、実験台に成らない引き換えに。
銀が、実験台になるってことか。
どっちか選択とか、引き換えとか、あまり好きじゃないのに。
それしか、途は無いらしい。