違う。 違う。 こいつの言ってることは違う。
だって、あたし達は、自分の親に捨てられたんだ。
実験体だったなんて、嘘だ。
死んだ魚
松「・・・お前は、何故して、そんなに白夜叉を守りたい?」
「大事な者だからだ」
松「・・・恋仲か?」
「違う」
小さい頃から、傍に居た。
小さい頃から、護ってくれた。
傍に居て、守ってくれた。
アタシは、銀の傍に居て、安心した。
一人じゃないんだって。 もう、置いていかれる事も無いんだって。
誰かが、自分の事を思ってくれてるんだって、感じるだけで。
例え、どんな辛い日でも、次の日は笑っていられる様な気がした。
松「・・・面白いな、お前」
「・・・」
松「・・・・なるか? お前が」
「ですが、松山先生ッ!」
松「金輪際、どっちでも良い」
「成る! 成るから、銀時は・・・」
松「お前のお望みどおり、返してやる。 松陽の寺子屋に」
「・・・先生を知ってるのか?」
松「松陽だろ? あの、攘夷派で、馬鹿な奴」
「・・・」
松「早い内に、開国派に身を転じていれば、捕まることも無かったろうに。
馬鹿な男だ。 攘夷活動などに、時間と命を費やすとは。
負けの見えた、戦だって分かっていながら、攘夷の先頭を走った男」
「・・・お前は、開国派なのか?」
松「いや、昔は攘夷派だ。 だが、結果の見えた頃、開国派に身を転じた。
お前等が、如何こう暴れようが、もう遅いんだ。
お前等が、もっと強ければ、勝てたかも知れんな」
何時しか、松陽先生が居なくなってた。
確か、裏山で銀と山菜採りに行った日。
いつもなら、聞こえてくる松陽先生の怒鳴り声が無かった。
ヅラに聞いたら、「先刻、幕府の人間に捕まった。」と言われた。
それ以来、何の音沙汰も無かった。
死んだという連絡も無ければ、切腹したという連絡も無い。
晋助は、その日から、鬼兵隊を結成。
夜、フラッと居なくなったと思えば、帰ってきて。
次の日戦場に行けば、敵は半減している。
殺し方は、鬼兵隊が殺したと分かるくらい、惨い。
ヅラは、寄り一層、松陽先生を真似ようと、教科書を開いて、攘夷を学ぶ勉強。
新しい志士が来れば、使わなくなった教室を利用して、攘夷を説いている。
ヅラが、段々、文武両道になり始めた頃だった。
ウザったかった、長髪も、もっと長くなり。
先生が居ない分、料理も掃除も、ヅラがやってきた。
「・・・」
松「・・・松陽が気になるのか?」
「別に」
松「・・・・」
よく、頭の中整理がつかないけれど。
分かったことがある。
目の前に居る奴等は、敵。
それだけ。