あの日は、そう。
雨上がりだった。 でも、空は晴れることも無く。 曇り空。












死んだ









雨上がり。
お母さんに、手を引かれて、裏路地を歩いてた。

途中、誰かの家を寄り、また歩き始める。
お母さんは、誰かとおしゃべり。
アタシより、大きい男の子が、隣で歩いてた。
綺麗な、銀髪。 目は大きく、モサモサの頭。


途中、お母さん達の話に、耳を傾け聞いた。
相変わらず、隣で歩く、銀髪の男の子は、黙ったまま。 鼻をほじってる。


「・・・いいのかしら?」
「死ぬよりもマシじゃない」
「・・・怒られちゃいそうで怖いわ」
「この子達が生きられるんなら、私はそれで良いけど」
「・・・それもそうね。」
「知らなかったわ。 産んだ子が実験体になるだなんて」
「・・・隣の子も死んだっていうじゃない? 本当、可哀想」
「何とか、うちの子と銀時君だけは・・・」
「そうね」






意味の分からない、単語ばかりが出る会話。
繋がった手は、少し冷たい。
初めて、外に出れると思って、喜んでいたのに。
何故か、暗い気持ちになった。
天気の所為じゃない。
会話の所為じゃない。
お母さんの悲しそうな声の所為だ。





しばらく歩いて、ある家の前で止まった。
小汚い、家。
戸を引いて、家を見ると、思ってたよりも中は、少し大きい。


「・・・?」
「これからは、此処で、そこに居る、銀時君と暮らすんだよ?」
「…なんで?」
「今の家は、危ないから」
銀「お母さん達はどーすんの?」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・」




隣に居た、男の子の質問の所為で、沈黙。
時間だけが過ぎて行く、否な感じ。
今、何を話せば良いか、分からない。
今、何をすべきかも、分からない。






「・・・否だ。 お母さんと居る!」
銀「・・・俺も。」
「・・・駄目。 銀時も、貴女も、此処に居る!」
「・・・ごめん。 でも、焼印がついちゃえば、終わりなんだよ?」
「・・・・・・」


そう、吐き捨てた後、アタシのお母さんが家を出た。
追いかけようと思い、後を追おうとしたら、もう男の子の母親が止めた。


「・・・銀時も、貴女も一緒。
 これからは、苗字なんて名乗っちゃ駄目だよ?」
銀「・・・なんで?」
「いずれ分かると思うけど。 今は駄目。
 大きくなったら、坂田って銀時は名乗って。
 貴女は、貴女の苗字を名乗るの。 良い?」
「・・・・うん」
「絶対、お母さん達迎えに来るから。」
銀「・・・・・・」
「本当?」
「うん。 絶対。 だから、それまで、此処に居てね?
 銀時と一緒に」
「うん」



この人の手も、お母さんと一緒。
冷たい。
真っ直ぐに、その人を見据えた後。
手を離し、家から出て行った。




後日、やっと気付いた。
銀時って子が、教えてくれた。















銀「気付いてねぇの? 俺等、捨てられたんだぜ?」















何度、否定しても。
銀時の口から出るのは、 「捨てられた」 だけ。
理由は、銀時も知らないらしい。
ただの憶測では、 「天人と人間のハーフだから」 だとか。



信じたくなかったけど。
何時になっても迎えに来ないから。
きっと、銀時の言うことは。 本当なんだって思った。












back/Next/top