ユサユサと、銀時を揺らしても、起きない。










んだ





誰かが入って来たと思ったら、傷口の手当をしてくれた。
銀時の手当ても求めたら、気の良い天人だったらしい。
拒否することも無く、優しく笑って、銀時の手当てもしてくれた。

消毒水の匂いが、鼻をくすぐる。
傷口は、そんなに痛くは無いけれど。 怖いのは、流した血の量。
銀時は、軽傷で済んだらしいから、心配ないけど。





ユサユサと、銀時を揺すった。








「・・・ぎーんーとーきー?」
銀「・・・・」
「起きないと、朝飯なしだって、ヅラが言ってるy



最後の手段。 コレで起きなかったら、今の銀時の起こし方を知らない。





銀「マジでか!!!」
「あ、起きた」




ガバッと、起き上がり、周りを見渡す。
傍においてあるのは、銀時の鎧と刀、羽織、鉢巻き。






「おはよ」
銀「おはよ って…お前ェ、此処、何処だよ。
  ヅラは? 高杉は? 皆無事か? っつーか、戦争終わった? 朝飯は?」



答えられる質問だけ、答えよう。




「戦争は、終わったと思う。 此処は…何処だろう。知らない。
 朝飯は、朝食べたんじゃないの? ヅラも高杉も、今どこか知らない」
銀「・・・ま、俺が見る限り、此処寺子屋じゃねぇだろ。
  ほら、帰るぞ」





テキパキと、鎧と鉢巻、刀を身につけ、羽織を羽織った。
銀時は、アタシの手首を掴んで、立ち上がらせようとするけれど。





アタシは、それに背き。
座ったまま。

怪しんだ銀時は、目の前にしゃがみ込み、アタシの顔をを覗き込んだ。





銀「何してんだ? 帰るぞ」
「・・・・帰らない」
銀「・・・帰らないって。」
「・・・・」
銀「戦争終わったんだぜ? お前の望んでた平和がくるんだから。
 ほら、早くしろ」





そう、そうだよ。
ずっと、ずっと、ずっと望んでた日々がやっと来るって思った。
でも、ね。






「・・・・」
銀「昨日俺、言ったろ? 一緒に、暮らそうって。 昔みたいに。
 家借りてさ。 料理は、今のお前じゃぁ、駄目だから、俺がやる。
 ヅラと高杉が、時々こっちきて、遊びにきたり、一緒に呑んだり・・・・
     なぁ、??」





昨日は、確かにそう言った。
銀が、アタシみたいなじゃじゃ馬、他の誰も面倒が見れないって。
銀の所に行こうって、決めたけど。
こんな事、成るなんて想像もしなかった。






「行けない」
銀「んでだよ」
「・・・・・」
銀「・・・高杉ん所か?」
「・・・」
銀「・・・ヅラん所?」






ブンブンと、首を振る事しか出来ない。
これ以上、口を開けたら、思っている事を、知ってることを、全部銀に喋っちゃう。







「行けないよ。 だって、銀ってさぁ、チャランポランだし。
 頼り甲斐はあるよ。 でもさ・・・」
銀「・・・」
「というか、2人で暮らすんなら、金どうすんの?」
銀「あ? 決まってんだろ、仕事すんだよ、仕事」
「何の?」
銀「何のって、お前ぇ・・・・。
 万事屋銀ちゃん」
「・・・」
銀「んだよ! 其の目! この人終わってる、見たいな目!!!」



万事屋って・・・ ようするに、何でもするってことか。
銀らしい、って言えば。 らしい・・・けど。




「じゃぁさ、晋、どうにかしないと」
銀「・・・」
「銀だって、気付いてる。 晋助、あのまま往ったら、大変になっちゃう。
 ヅラも。 これ以上・・・」
銀「・・・分かってる。 それは」







向き合って座る銀時とは、顔が合わせ辛い。
開いてる窓から、見えるのは、裏庭風景。
灰色の空には似合わないほどに、美しく咲いた紅の桜。


零れそうな涙は、目を閉じたら、案の定、落ちた。






銀「・・・お前、泣いてんj
「来ないで!」



これ以上。 優しくしないで。
無かったことにしよう。 今までの事。
アタシは、銀時って人には出会わなかったことにする。
そうすれば、何時死んでも、死にきれる。




これ以上。 視界に入ってこないで。








ただ、貴方が恋しくなるだけ。






銀「・・・・無理だな。 其の願い事は」







フワッと、優しい匂いが背後からする。
背中に感じるのは、昨日の夜と同じ。
銀時の体感温度。





「・・・・」
銀「泣けよ。 泣きたきゃ」
「・・・・否だ」
銀「・・・素直になりあがれ、コノヤロー」
「あんだと!!! グダグダボーイ!」
銀「テメーに、言われたか無いわ! ドチビ!」
「黙れ」






もう良いよ。



十分だから、此処で、終わりにしよう。







これ以上、他愛の無いことをしていたら、もっともっと。











銀時が恋しくなる。




「…今度は、自分で自分の身を、守るよ。
 昔、誰かが言ってたよね。
 守られてばかりでは、強くなれない。
 だから、今度は、自分で自分の身を守って見せるよ。」
銀「・・・どういう意味だよ」

















今度会ったときは、天国か地獄かは知らないけれど。








きっと、銀時が思うよりも、強くなってるから。

















___________ゴンッ






背後に居る銀時は、松山が打った手刀で、気を失った。



















守られてばかりでは、強くなれない。













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