「残念だけど、うちじゃぁ、その痕、治せないな。
 と言うよりも、アンタのコレ。 前科者かぃ?」

焼印なんて、罪人が、やるもんだろ?
ったく。 ふざけた真似しやがって。

「違うんだけどよ。 消して欲しいんだわ。 あの番号。
 不気味でしょうがねぇし。 誰かの所有物って感じがして、嫌いだし」
「消せないって。」






死んだ






背中のぬくもりが消えた瞬間。 銀時を忘れようと、決意した。


でも、忘れられない。
決意も、何らかの形で、虚勢に変わる。







気を失った銀。
それを、引き摺る様にして、部屋から引っ張り出す、松山。
入れ違いで入って来たのは、今さっき、銀を此処に運んできた天人と、他の天人2匹。
一匹の天人の手には、0と1と4の烙印。
先っぽが、焼けるような赤。

座ってたアタシに、天人2匹が、覆いかぶさって、右肩の羽織を破られた。


右腕までの羽織が、音を立てて破かれる。
押さえつけられてる所為で、ろくに抵抗も出来ない。


「ッ! 何をする!」
「烙印。」
「逃げないように」
「逃げても、すぐにお前が014だって、分かるように」
「・・・・・・あ」


瞬時に、口を塞がれ、手を縛られ、叫ぶことも出来ない。


伏せて、天人2匹が覆いかぶさっても。
背中に近付く烙印の熱さは、伝わった。








焼けた皮膚の音。
痛すぎて、声にも成らない。






痛すぎて、目に涙が浮かんだ。
こんな所で、泣くもんか。
こんな、下らないことで、泣かない。 泣いちゃいけないんだ。

だから、泣かない。















数分後、やっと3つの烙印が、離れたと思ったら。
痛みの所為と、傷口の所為で、上手く動けなかった。






「・・・・チッ。 押し過ぎたか。 凹んでやがる」
「・・・・ッ!」




痛さを表現するならば。
キセルやら、タバコの火元を自分の腕に押し付ける、根性焼き見たいな痛さ。
心臓が、煩い。 手には、冷や汗。 息が、嫌でも上がる。








そっと、微かに動く手を、自分の右肩に持って行った。
触れば触るほど、痛いけれど。
手で、確かめてみれば、しっかりと014と烙印があった。
しかも、今さっき天人が言ったとおり。
凹んでる。








右腕に見えた、傷跡。
戦って、戦って、何が残ったんだろう。
得た物よりも、失った物の方が、遥か上だ。

先の見えた、答えの出ていた、戦。
負け戦に、身を投じたアタシ達も、馬鹿だけれど。
それでも、アタシは、皆と一緒に居たくて。
先生を奪った、幕府が許せなくて。

何があっても、どれだけ傷跡が出来ても。

絶えず、刀を握ってきた。 銀時の背中で。
ヅラの居る、隣で。 晋助の居る、あの戦場で。







それでも、何も。 残らなかった。
















何億年も前に、傷跡なら、残ってた。


消えなくてもいいさ。



痛みは、もう。










無いから。











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