俺が、今。 目を逸らし続けている過去は。


小さな過去は。





お前と、居た証だった。










季節外れの、は、










戦場の紅桜。




それはの、異名だった。






丁度、2年前の今。
戦争が終わって、寺子屋に帰ろうとした矢先。

どこかの民家で、は、俺についていけないと言った。



その夢から覚めたときに、知らされたのはの死。










ただ、引っ掛かるのは、この死亡通知書。


第一、俺等 攘夷志士は、死んだら 死んだで、それで終わりだ。

死亡通知書なんか、いちいち来ないし、
 誰もそんなのが無くても、次の日帰ってこなければ、死んだのも承知だ。











もし、死亡通知書が届くんなら。




この寺子屋には、きっと 100を超える、死亡通知書が来るに違いない。












それなのに、何故 の死 に限って・・・・?








俺らは、攘夷戦争に、参加する前。 紙を書く。






名前




住所もしくは寺子屋の住所





それと、両親の有無。
 もしココで、両親が居ると書いておけば、攘夷党に止められる奴が多かった。




この紙と引き換えに、
 俺らは白い鉢巻を貰い、担当地区を教えてもらって、参戦する。











別に、100以上の松陽先生の生徒が居たわけじゃない。

寺子屋も、何の身寄りの無い奴等は、
 攘夷党から、ランダムに住所が決められる。
 そのランダムに決められる住所の殆どが、松陽先生。
 俺等の寺子屋の住所だった。(有名だし、でかいし。)

そう、ヅラが言ってた。









そんな疑問は、日常の大きな事に飲み込まれ、何時か忘れていった。



俺は、万事屋を開いた。

もう、失くすのは。 怖い。
 だから、俺は逃げるようにして、何も背負い込まないようにしてきた。









だけど、それが、俺の性らしい。

何時の間にか、地味なメガネ、怪力娘。
 そんな奴等を、背負い込んでた。





が、居なくなって、俺は、少し変わった。


過去から目を逸らしたまま。
過去の事から、逃げたまま。

今日を生きている。





俺は、リビングの机のうしろに有る窓から、桜を見た。
そういえば、あそこは、屁怒絽の花屋だっけ。

良いもん、植えてんじゃねぇか。







赤みを帯びた桜。

言うなれば、紅桜。

それは、確かに。
 と一緒に話した夢の中に出てた。
は、その、真っ赤な 桜 を見ながら、 俺に言ったんだ。

「一緒に行けない」 と。




あの時と、同じ紅桜。


神「銀ちゃーん。
 実験体ゼロイチヨンって、何アルかぁ?」









新「あぁ。つい最近、研究者の松山って人が、実験に成功したらしく。
 その、成功した、実験体の番号だよ。」


神「・・・ショウザン?」

新八「日本で一番だって言われてる研究者。
 開国派の人間だったんだって。人間使って、実験してるらしいよ?」

銀「巷を騒がせてるらしいじゃねぇか。 その ゼロイチヨン。
 なんか、不気味だよなぁ」

新「その実験体は、生きてるから、完全に悪いとは言えないけど。
 それに、何で、そんなに珍しいんですかね。 たかが、実験に成功しただけなのに。
 第一、皆、何の実験に成功したか知らないらしいですよ?
 にしても、人間で実験なんて、最低ですよね。」

銀「最低なのは、実験体そのものだろ。
 自ら実験台になった、その意図が、分からねぇけどな、俺は。
 ったく、最近の奴の思考は読めねぇ」

新「と言うよりも、神楽ちゃん。 そのゼロイチヨンが、どうしたの?」

神「今さっき、聞いたネ!!!!!」

銀「ふーん。」



俺は、興味も無く、曖昧に答えた。


研究者ねぇ。

だったら、人を甦らせる・・・・






銀「オイ。ぱっつあん。
 ソノ研究者、蘇生とかよぉ、できねぇかな」


俺は、椅子から立ち上がり、振り返って、ソファーで茶を飲んでる新八を呼んだ。
行き成り立ち上がった俺に、2人はびっくりしてた。


新「何言ってんですか!!!
 死んだ人を甦らせるなんて、無理ですよ!」

銀「・・・・だよなぁ・・・」


俺は、また座りなおし。
引き出しから、紙を出した。




そう、の死亡通知書。
 形見として、渡された刀は、俺のタンスの奥底に置いてある。

俺は、ソレを、見た。

桜が、風に靡けば。
運んでくる、甘い風。
俺は、その風に、当たりながら。

窓から、見える桜を見た。


ココに、俺の隣に、お前が居なけりゃ、何の意味も無い。



俺がほしいのは、だけ。


だから、死んだなんて、認めたくない。











風に乗って来た、桜の花びらが。






の死亡通知書の上に、舞い降りた。









back/Next/top