その日は、何時もと変わらない。
空は澄み渡り、太陽は人々の影を作る。
公園に集う、子供から大人。
表路地を歩いてゆく、人の声。
ただ、違うのは。
でかい犬、一匹連れた女の子が、街を練り歩いている光景だけ。
ゼロイチヨン--014
神楽は、周りの目線も気にせずに。 愛犬とも言える、家族 定春を連れて、
のん気にお散歩。
公園を抜け、かぶき町を一周。
マダオに会ったり、悪戯小僧に会って決闘したりと、それが彼女にとっての日常日課。
前方から向かってくるは、黒服に身を包んだ、男2人。
神楽、 いや 某万事屋にとって、この男達の居る組織は、邪魔のもでもあり、
腐れ縁でもあるような、微妙な関係。 それでも、良い仲とは言えない。
「おい、コラ。 道退け。 糞チャイナ!」
「あんだと! そっちが、退けば良いネ!」
「・・・そこの犬、誰も噛み付いてないよな。
困るんだよ。 被害届、何件出てんと思ってんだ!
今月に入って200件以上だ!」
「定春は、人に噛み付いても、人は食べないネ!!」
言い争いの始まりは、黒服に身を包んだ男1人の言葉から。
栗色の髪の毛、丸い目は、幼さの残る、好男子。
だが、こう見え、彼等所属の組織の中で一番、剣が強いと謳われている。
「大体! 何でこんな真昼間から、ほっつき歩いてるアルか?
仕事しろ! 税金泥棒共が!!!」
「いやねぃ。 土方さんが、明日当り、死ぬんでさぁ」
「マジでか? ご愁傷様アル! マヨラ!」
「何でだァァァアアア!!!!!」
刀を振りかざす、男。
銜えタバコで、目は藍色、どこかクールに見える。
その男は、神楽に刀を振りかざしたが、定春の噛み付きによって
視界が、真っ暗になった。
「死にに行くのも、同然じゃないですか。
014捕まえにいくなんて。 聞くには、サイボーグとか。」
「014? 何アルか、ソレ。」
「おい! 総悟!」
「良いじゃないですかぃ。 どうせ、巷じゃぁ、コイツの話で持ちきりでさぁ」
「早く説明するヨロシ」
神楽は、ただ、情報を得るが為に、014の事は知らない振りをした。
刀を振りかざした男は、刀を鞘にしまい、自力で定春の口から脱出した。
自分の首を、コキコキと鳴らし、神楽の質問に答えた。
「014ってのは、裏で幕府の実権を握ってる天導衆の奴等が
関わってる、人間実験の最終実験体の名前だ。
どんな能力持ってるか、知らねぇけど。 聞くには、天人共も狙ってるらしい。
ま、それもそうか。 日本一と言われる、松山が手に掛けた人間だしな」
「・・・ソレを捕まえに行くんでさぁ」
「・・・アタシも行きたいアル! 戦ってみたいネ! ソイツと! 強そうアル!」
「何言ってんだ、このアマ」
「強そう、じゃなくて。 実際強いんでさぁ」
後から、組織の密偵、地味男がきて、2人は神楽の元から、帰った。
後姿をただ見るだけの神楽は、少しだけ。
そう、少しだけ。
良い情報を得た、と思った。
「やっぱり、明日の非番無しにしてくだせぇ」
「珍しいな、お前にしては」
「014に会ってみたくなってねぃ」
「え゛! 沖田隊長も行くんですか?」
「んでぃ。 其の反応」
「いえ、別に」
「足手まといはごめんだぞ」
「分かってまさぁ」