気を失ったと思った。
その後、すこし浮遊感がした。
んで、次に、投げ飛ばされた感覚。
ガチャンと言う音は、扉を閉めた音だったと思う。
死んだ魚
目が覚めたら、一人、牢屋みたいなところに居た。
牢屋と言っても、鉄格子が、あるわけじゃない。
密室みたいな所。
窓には、鉄格子がかかってる。
朝になったんだと思う。 窓からは、光が差し込んできた。
勢い良く開いたドアからは、長い影が差し込んできた。
逆光の所為だ。 誰なのかもわからない。
でも、影から伺えるのは、腰に刀をさした男。
いつかに感じた気配。
「014とは、お前の事か?」
「・・・・そうだけど?」
昨日から言ってることを、また繰り返すのか。
何て言ったって、情報なんか持ってない。
言った通り、自分は研究結果とか、興味皆無だったから。
大体、知るわけ無いんだ。
記憶は日々、消えていく。
辛うじて、覚えてるのは、銀時の万事屋銀ちゃんとか、そんな名前と。
高杉晋助と、ヅラ。
先生の名前。
寺子屋の場所も、ましては、何処に住んでたのかも。
忘れていった。
何処で生まれたのかも、誰が母親なのかも。
アタシは、返事をした、その男に。
振り向きもせずに、窓の外を見ながら。
「どこか出会いませんでした?」
「会ってない。」
「嘘、付いてるんじゃないんですか?
だって、声。聞いた事が在るし・・・」
気配だって、感じた事がある。
「今度は、何の能力だ?
嘘まで見抜けるのか。お前は」
嘘を見抜くのは簡単。
「嘘も見抜けたし、一度聞いた声は、忘れないんですよ。」
気配だって、早々変わるものじゃない。
この男、会った事がある。
「んで? 何しに来たんですか?
この前、大人しく捕まったじゃないですか」
そうだ、この男。 アタシを捕まえた男だ。
ご飯食べてるときに騒がしくて。
でも、声は聞いた。気配は感じた。
それだけで、十分。
自分の脳には、インプットされる。
「別に。 名乗って置こうかと思ってよ。
土方十四朗。 真選組の副長だ。」
あぁ。 幕府特別武装警察の。 真選組か。
松山から聞いたことがある。
真選組の仕事は、主に攘夷浪士鎮圧。
高杉と、桂とか言う奴が、主な敵らしい。
「知ってますよ」
有名じゃん。だって。 攘夷浪士の敵だから。
だけど、晋助は、こんな輩には、負けない。
多分、桂とか言う人も。
攘夷戦争から、生き残った攘夷志士は、そんな簡単に死なない。
土「なら、話し早いじゃねぇか。」
「何の?」
土「嫌よぉ、白夜叉とか、見つかんなくてよ」
白夜叉?
「誰ですか? ソレ」
知らない。 と言うよりも、聞いたことが無い。
忘れてるだけなのかも知れないけれど。
土「・・・・知らないのか?
攘夷浪士最強と謳われた男だ」
記憶が無いんだ。そんなの。
でも、毎日毎日、モノを斬ってる。
それに、毎日毎日、記憶は消えてく。
「記憶に無いです。
ほぼ毎日、何らかの記憶とか消えてくんで」
土「・・・そうか」
そういったら、土方とか言う奴は、悔しそうな顔をした。
大体、今離れ離れに成ってる奴等が、どうなってるかなんて知らない。
死んだかもしれない。 生きてるかもしれない。
晋助然り、
銀時然り。
ヅラ然り。
何をして、何処に居るかも、知らない。
その後、アタシ達は、ずっと話し合ってた。
土方が、外の事をアタシに教えて。
アタシは、ソレを聞いてた。
ターミナルの事。 かぶき町の事。 天人のこと。 マヨネーズの事。
自分の上司と部下の事。
市内の見回り、[ヤロー]とか言う人の事。 ペドロとか言う映画の良さ。
アタシは、ヤローがどういう人なのか気になった。
それと、土方の上司と部下。
聞く限りは、ユーモアな人なんだと思おうけれど、
その人たちに、土方は手を焼いてるらしい。
一通り、話した後。外から、誰かが入ってきた。
「副長! とっつあんがお呼びです!」
土「あ゛? 今行く・・・・。
アレ、俺の部下。 山崎ってんだ。
っつー事で、俺行くわ。」
「それじゃぁ」
呆気なく、土方は出てった。
アタシは、ただ座ったまま。
人と話すのが久しぶりのように、思えた。
明日も、松平とか言う煩いオヤジ奴じゃなくて、
コイツ・・・・・もとい、土方が来れば良いのにな。って、思った。