その日以来。
土方は、ほぼ毎日。仕事の合間を縫っては、アタシの所へ来た。
裏があるのは見え見え。
死んだ魚
どうせ、仲良くなって、情報を聞き出そうって作戦だと思うけど、
アタシは情報なんか持ってない。
アタシは、何で天導衆って奴等が、
そんなに実験の情報が欲しいのか気になった。
情報が欲しいなら、研究者の松山に聞けばいいのに。
それを、殺した・・・そんなの矛盾してる。
「そういえば、松平とか言う人が、情報欲しがってましたね」
アタシは、隣に座ってタバコをふかしてる、土方に言った。
何時もの時間。 何時もの部屋に。 土方は来た。
土「天導衆が、欲しいからだろ?」
大体、誰なんだろう。 天導衆って。
初めて会ったときは、同じ服をきた6人。ヘンなところに座ってた。
「だったら、参謀の松山に聞けばいいじゃないですか」
土「松平のとっつあんが、間違いで、松山殺したからだろうが。
それに、他の実験体は、皆死んだらしいな」
「・・・・」
土方が、来るようになってから。もう、3ヶ月は経つ。
毎日、こうやって、話して、話し終わったら、土方は帰る。 ソレの繰り返し。
先月は、沖田とか言う、土方の部下が一緒にきたりした。
最初は、山崎とか言うのが、時間になったら、土方の迎えに着ていたり。
______________________バンッ!!!
行き成り開いたドアに、アタシ達は振り向いた。
こんな開け方するのは数少ない。 松平だ。
察した土方は、一旦部屋を出た。
土「直ぐ戻ってくる」
その素振りが、激しく、誰かに似ていた。
誰かは、思い出せない。
ダメだ。毎日、思い出せないものが、いっぱいある。
途端に、頭痛が襲ってきたまま。アタシは、寝た。
◆
「お金もらえばいいじゃん!!!」
銀「無理だろ。先生ケチだし」
晋「おい、真面目にコレで行けるのか?」
ヅ「銀時、貴様、昔こんな事をしてたのか?」
アタシ達は、その日。 授業が無く、下町へ行った。
と言っても、お金がある訳でもなく、お菓子を盗もうということになった。
「大体 何で、晋達は、綺麗な着物着てるのに
お金ないの?」
銀「・・・俺等よりか、マシな服じゃねぇか!」
ヅ「知らん」
晋「俺も」
「ちぇー」
銀「おい、。ここで待ってろよ。 俺等で盗むから。
んで、盗み終わったら、寺子屋まで走って帰るぞ」
「おーけー!」
ヅ「おーけー! なものか!!!」
晋「騒ぐなヅラ。 気付かれんだろぉが!!!」
銀「。待ってろよ。直ぐ戻ってくる」
「うん」
その後、ヅラと晋助が、先に店に入り。 店主に集ってた。
その隙を突いて、銀時が、4人分のお菓子を盗み。
そして、アタシ達の、 [どきっ! お菓子を盗んじゃえ! 大作戦] は、成功を遂げた。
銀「なぁ。。何そのネーミング。
なにが、どきっ! だ!! ふざけんな!
こーゆー時は、 ボカン! お菓子を盗め! 大作戦だろ!」
「なにが ボカン! だよ!」
銀「・・・何かの音?」
晋「・・・・」
ヅ「バカバカしい」
アタシ達は、盗んだお菓子を食べながら、
追ってもない後ろに安心しながら、寺子屋への道を歩いた。
銀「なんだと! ヅラコノヤロー。
てめぇは、黙って、髪の毛伸ばしてろ!」
ヅ「なッ! 貴様! ロン毛を、侮辱するか!
先生だって、こんな髪型だろーが!」
「ヅラには、似合わないよ。長さ微妙だし。」
アタシは、飴を舐めながら、ヅラの髪を見た。
晋「・・・・に同じ。」
「ほら! 晋助だって、同感だって!!!!」
アタシ達は、そのまんま。喧嘩しながら、寺子屋に帰った。
その後でも、ヅラと、銀時は、喧嘩してた。
それに、晋助が、加わって、喧嘩が壮絶なものになった。
それは、どっかから、帰ってきた先生の拳骨で、やっと終わりを遂げた。
銀「イテッ!!!」
ヅ「グフォッ」
晋「っつー」
松「何してんだ? お前等。状況を説明しろ」
ソレもそのはず。 部屋の障子は、壊れてる。 掛け軸は、傾いてるし。
机の上に乗ってた、墨だって、零れて、畳が真っ黒になってる。
それと、先生が一生懸命育てようとしてた、小さな桜の木も。全てがボロボロだった。
銀「・・・ヅラが、悪いんだし。」
ヅ「俺じゃない。銀時だ」
晋「てめぇの、ロン毛の所為だろぉが」
銀「大体、んでこんなことに成るんだよ」
松「それを、説明しろって言ってんだろぉが」
その後、銀時達は、部屋の片付けと、明日の朝、庭を掃くという、罰を受けた。
アタシは、黙って、嘆く3人を置いて、屋根上に登った。
日が落ちる。寺子屋の裏は山。 山と山の間に沈む夕日が綺麗だった。
松「何してんだー? 」
「別に。」
アタシは、そっぽを向いて、先生を無視した。
松「・・・お前さぁ、怒ってんの?」
「別に」
松「・・・(汗」
アタシが、返事した後、先生は持ってた袋をくれた。
松「・・・服、ボロボロだろぉが。
新しいの、買ってやったから。ソレ着とけ。
銀時には、内緒だからな?」
「・・・もしかして、今日授業がなかった理由って、コレ買って来たから?」
アタシは、何だか嬉しくなった。
松「ん? 違うぞ。 ちょっと、松山とかと、話し合ってたんでな」
なんだ、違うんだ。期待して損した。
アタシは、着流しを取り出した。
筒袖の、黒に近い赤。 帯は、紺色。
「・・・ありがと・・・・です」
松「どーいたしまして。
そういえば、お前。自分の苗字、まだ覚えてんのか?」
苗字は、普段使わない。自分を捨てて行った、母親に”苗字は言うな”とか、言われてたから。
それに、呼び合う名前は、何時も下の名前。 先生でも、自分より小さい子でも。
「覚えてる。・・・・・・・」
松「・・・そっか。 でも、苗字まで、名乗るなよ。 銀時にもそう言っとけ。
タダでさえ、お前等は、人間離れしてて、目立つんだ。
松山に目ぇ、付けられたら大変だぞ?」
そう言い残して、先生は屋根から、下りていってしまった。
「・・・・」
アタシは、取り出した服を、袋の中に仕舞いこみ、あと少しで、無くなりそうな夕日を見た。
先生が、何時に無く真剣に、話してきたのが、何故か恐かった。
何故か、嫌なことが起きそうな、そんな感じがした。
◆
目覚めたら、隣に土方が座ってた。
土「良く寝るな。お前」
「・・・眠いんで」
松「・・・・おい。」
この声は、松平だ。
「・・・はい?」
松「・・・見せたい者が在る。来い。トシ。お前もだ」
そう言われ、アタシは、松平の後をついていった。
土方は、アタシの後ろを歩き。
アタシ達は、ある部屋に入った。
_________________ガチャッ
「・・・・・・」
幻覚 って。思いたい。でも、面影も全然変わらない。
忘れた記憶が、少し戻ってきたような気がした。
「・・・・・あ」
言葉が出ない。 死んだと思ってた。 生きてないって、思ってた。
何処を根拠に? と、聞かれても、分からないけれど。
死んだと、ずっと思ってた。
だって、捕まった先は幕府。
だから、もう打ち首か、切腹とか、そんなんで、死んだのかと思ってた。
「・・・・せ・・・・・先・・・・生・・・?」
松陽先生そのものだ
ロン毛。 目は閉じたまんま。
椅子に座ってるのはいいが、口と手と足が、縛ってある。
松「・・・・・」
土「・・・・・・・」
「・・・・何・・・・で・・・?」